黒子のバスケ

彼は彼女を甘やかす
2ページ/3ページ

今は、練習試合の帰り道。
秀徳のマネージャーが帰り道でドラッグストアを見つけ、中谷監督に
「アイシングスプレーがないので買ってきていいですか?」
と許可を取り、そのドラッグストアに入ることになった。
「全員で行くことはないだろう」
との大坪の意見でマネージャーの他には何か個人的に買い物があるという宮地と、そんな宮地がなにを買うのか興味があったため、母親に台所用品を頼まれたと適当な理由を付けた高尾が中に入った。

高尾は適当なスポンジを手にした後、宮地に視点を定めた。
宮地はピーチティーの香りのハンドクリームを手に取った後、化粧品のコーナーをウロウロし始めている。

高尾は宮地とさつきがつきあい始めたきっかけがさつきをアイドルの研修生と間違えた宮地がハンドクリームをあげたからだと知っている。

今、宮路が持っているハンドクリームは自分で使うものなのか、さつきに買ってあげるのか分からないけど、ピーチティーの香りというだけでわらえるのに(彼が今まで使っていたハンドクリームはビタミン入りの味も素っ気もないクリームだった)次にウロウロしているのが化粧品コーナーだ。

宮地はしばらくウロウロと化粧品を見ていたが、しばらくすると意を決したように『ビューティーアドバイザー』と名札をつけた女性に近づいた。

「マスカラとアイライナーっていうのが一体になった化粧品があるとおもうんですが、どこにありますか?」
真剣な顔で聞く宮地に高尾は吹き出しそうになるのをこらえる。

「こちらです、カラーがいくつかありますが…彼女さんへのプレゼントですか?」
案内してくれた女性の質問に高尾は心の中でだけおねーさんGJと親指を立てた。

「はい、そうなんですけど‥色はこれだけですか?」

さらりと答えた宮地に高尾は心の中でだけ宮地さんかっけーなと思う。
高尾はもし仮に彼女ができても一人でドラッグストアで彼女のために化粧品買うのは気が引ける。
彼女さんのですかときかれたらごまかすと思うのに宮地ははいと言いきったのだから。

「そうですね、こちらアイテム自体が限定品でお色はこの四色になってます。」
「そうですか、ありがとうございます。」
宮地は女性に礼を言うとしばらくそのアイテム見ていたが、スマホを取り出して電話を始める。

「もしもし、さつきか‥」

宮地の声に高尾は耳をダンボにする。
桃井ちゃんに電話してるよ!!

「だから、オレはゴールドがいいと思う」
「赤は似合わないと思う」
「ゴールドにしとけって!」
「赤は赤司連想するからいやなんだよ!」


聞こえてきた会話にこんどこそ高尾は吹き出した。
宮路の一方的な会話しか聞こえないけれども、それでもどんな話をしているのかはなんとなくさっすることができる。
宮地さん、きっと赤いマスカラがほしいっていう桃井ちゃんに赤は赤司を連想するからいやだっていってんだろ、どんだけ桃井ちゃんすきなんだよと思ったらこらえられなかった。

通りがかった人が不審そうな目で自分を見たことにも気がつけないほど、高尾は宮路をみながら笑いをかみ殺すので精一杯だった。

「……仕方ねぇなぁ、確かに赤が一番さつきに似合いそうではあるんだよ、分かってんだけど…」
「わかった、ああ、ああ、オレも好きだ。
赤いの買っとくから。」

きっと、電話の向こうでさつきに好きだとかいわれたにちがいない。
その結果、宮地はさつきにオレも好きだいい、赤いマスカラを買うことに決めたのだろう。
電話を切った宮地に高尾は近づく。

「宮地さん、それ桃井ちゃんに買ってあげんスか?」
声をかけたら宮地はいやそうな顔をした。

「桃井ちゃんとかなれなれしいんだよ、お前。
撲殺すんぞ!
そーだよ、さつきがほしがってたから買ってやんだよ。
でも限定品だって言うから、さつきの次の小遣い日までに売り切れたら買えなくなっちまってかわいそうだからな。」

いやなのはオレが桃井ちゃんってよんだこと何だ、と思いつつ
「宮地さん、彼女に激甘っスね!
まぁ、かわいいかわいい彼女っスもんねー!」
と笑ったら宮地は真顔で頷いた。

「あたりめぇだろ。
オレが甘やかしてやんなかったら誰があいつをあまやかすんだよ。」


……そりゃ桐皇の青峰以外の部員さんとか、キセキの世代の全員とか、結構いると思うっスよ。

高尾は心の中でだけ思って、口には出さなかった。


言ったら本気で撲殺されるかもしれないからだ。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ