黒子のバスケ

呪縛
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そんなことを考えたからだろうか、あれから3年。
オレは18才の高校三年生で、保護者は亡き兄の奥さんだったさつきっち。
オレはさつきっちと二人きりで両親が残してくれた家で暮らしてる。

大輝兄は半年前、亡くなった。

大輝兄は頭は悪いけれど運動神経は抜群によかった。
それで私立中学の体育教師になったけれど、部活の合宿中に川遊びを許可したら溺れた生徒がいて、その生徒を助けたあと、力尽きて自分が流された。

さつきっちは遺体に取りすがって泣いたけれど、生徒と親が挨拶に来たら笑顔で
「生徒を守りきった夫を誇りに思います。」
って言ったんだ。

葬儀の時もそういった。

気丈な奥様だ、みんなそう言ってるけどオレはさつきっちが今でも夜になると泣いてるのを知ってる。

それを毎晩、毎晩慰めるのがオレの日課だ。

泣くだけ泣いたあと、さつきっちは顔を上げて泣き腫らした顔で
「年下の涼ちゃんに頼ってごめんね…」
と言う。

それにオレは
「年下とかそんなの関係ないっス。
だってさつきっちはオレの家族じゃないっスか。」
と笑って答える。

さつきっちは知らないんだ。

泣いてるさつきっちを慰めながらオレが内心で大輝兄が死んでよかったと思ってることを。
自分でも人でなしだと思うけど、実の兄の死をひっそりと喜ぶくらい、オレはさつきっちを愛してるんだ。
だからさつきっちにオレは優しくする。
家族って言葉を言い続ける。
そうすることで、さつきっちを縛ってるんだ。

「そうだよね、たった二人しかいない家族だもんね…」
さつきっちはオレの家族だって言葉に泣きながら笑う。
その言葉が彼女をオレに縛り付ける呪縛だとも知らずに。

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