黒子のバスケ

呪縛
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オレの両親が死んだのはオレが14才の時だった。
その時、オレの兄の大輝は19才だった。

普段はそう頼りがいのあるわけでもなかった大輝兄が全てのことを取り仕切ったのでオレは詳しい事は分からなかったけど、両親が死んでしばらく経った後で大輝兄に言われた。
「オレとお前はこれから二人きりで生きて行かなきゃなんねぇ。
オレ達に親戚はいねぇ。
信頼できるのさつきとその両親だけだ。」


さつきって言うのは隣家の桃井家の一人娘でオレたちの幼馴染でもある桃井さつきのことだ。
さつきっちは大輝兄と同じ年でピンク色の長い髪が綺麗で、華奢と言えるほど細身のくせに胸は大きくて、顔だちもたれた目が可愛らし いのに人に与える印象は綺麗で、面倒見がよくて優しいという、オレの初恋の女の人のことだ。

桃井さんちの両親はオレの両親と仲がよく、オレらには親戚がいたものの、桃井さんちの両親は天涯孤独同士の結婚で親戚がいなかった。
だから互いの両親はなにかあったら協力しあおうと約束してたらしい。
うちには親戚がいたが、疎遠だったからだ。

そしてその約束どおり、さつきっちもご両親も本当によくしてくれた。


大輝兄は大学生だったけど、家のローンは親父がなくなったことでちゃらになり、両親の保険金と相手に非がある事故だったのでその保証金、かけてた学資保険も親父が死んだことで払い込みは不要なのに満額下りることになり、大学生の大輝兄がバイトをしなくてもオレも余裕で大学まで行けるほどの金が手元に残ったらしい。

だけどその大金を学生二人の兄弟が手にしたことで親戚連中が集ってくるようになり、それから守ってくれたのがさつきっちの両親だったらしい。

それが原因で大輝兄が親戚がいねぇといったのを知ったのは、オレが15才の時。


さつきっちの両親が亡くなった後のことだった。
オレたち兄弟をまるで本当の息子の様に面倒見てくれたさつきっちの両親も事故で亡くなった。

さつきっちもオレたち同様、金銭的には今後の生活には困らなかったけれど精神的に参ってしまい、大輝兄はさつきっちをオレ達の家に泊まらせてた。

その時に、親戚の話を聞いた。
そして大輝兄がさつきっちと結婚しようと思ってることも。
「オレたちと違ってさつきは親戚いねぇからな。
金を集られる事もない代わりにもうこの世に家族と呼べる人間はいねぇ。
だからオレがさつきの家族になるつもりだ。
お前に言わなかっただけで、オレとさつきは二年前から付き合ってたし。
結婚したからって涼太を放り出すわけじゃねぇ。
ここにさつきが引っ越してきて、さつきの苗字が桃井から黄瀬に変わるだけだ。」

そんなの、いやに決まってる。
さつきっちはオレの初恋の人で、今も想い続けてる女性なんだ。

不遜でぶっきらぼうだけれども実は優しくて弟思いの大輝兄をオレは尊敬してた。
なんだかんだ言いつつもオレを大事にしてくれた大輝兄。

だけどオレはその兄を初めて憎いと思った。
憎いけどいやだ何ていえなかった。

オレがいやだって言ったって、二人は結婚できるんだし、オレの気持ちに気が付いた大輝兄がさつきっちを連れてどこかに逃げたとしたらもっといやだと思ったからだ。

オレは
「おめでとうっス、大輝兄!」
と笑うしかなかった。



親戚のいないオレたち兄弟と天涯孤独になったさつきっちだけど、二人は大勢の友達に祝福されて結婚式を挙げた。

白いドレス姿のさつきっちはとっても綺麗で、まるで女神が舞い降りたみたいで。
タキシードも肌も黒い大輝兄とは対象的だったけど、大輝兄が笑顔で
「さつきを幸せにする」
って宣言した姿はその相手がさつきっちじゃなかったらかっこよかったのにと思った。

そして、幸せになんかさせてたまるか、とも思ってしまった。

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