黒子のバスケ

可愛いお前が望むなら
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赤司財閥が借り切った旅館はごくごく普通の旅館だった。
赤司が借りるのにこんな普通の旅館なのかとキセキの世代たちは思ったが
「この方が犯人が警戒しないし、貸切にもしない。
その方が犯人が宿泊客として紛れ込めて動きやすいだろう。」
とのことで、全員が納得した。

そして、さつき以外の各学校の合宿出席者にはさつきのストーカーの事と、ストーカー捕獲への協力を取り付けてある。
そのため、誠凛の相田リコと陽泉の荒木雅子はさつきとの相部屋でいいと言ったけれど、それは赤司と今吉が断った。
相田リコと荒木雅子の身にも危険が及ぶような事になれば、誠凛と陽泉の選手に申し訳ないからだ。

それで荒木とリコとさつきはそれぞれが一人部屋だけれど、さつきの部屋には盗聴器を仕掛けることになった。
カメラを仕掛ける話もあったが、それはさすがに緑間と黒子が反対した。
着替えをする時にどうするのだという話になった。
それでカメラは仕掛けなかった。



今は選手たちは赤司財閥の借り切った市民体育館で練習をしている。
その間、監督と主将はさつきのストーカーを捕まえるための会議を開いていた。

「お忙しい中、僕たちキセキの世代の大事な大事なマネージャーであるさつきのためにご協力を頂いて感謝します。」
と切り出した赤司に
「いや、桃井は『桐皇の』大事なマネージャーやで?
『桐皇の』大事なマネージャーのためにこんな力になってもろて感謝してますわ。」
とすかさず今吉が切り返す。

赤司と今吉の間に静かな火花が散るのをその場にいた誰もが見た。

「まぁまぁ、二人とも落ち着いてください。
桃井さんが桐皇の大事なマネージャーだということは同感ですが、とにかく今はそれよりもストーカー対策です。
キセキの世代、および幻のシックスマンを擁する学校が合同で合宿をする事は月バスなどで情報を流したので見学者もすでにいます。
女性が大半ですが、桃井さんや相田さんの記事も何度か月バスに載ってますので男性も何名かいるとの報告は受けています。
問題はその中にストーカーがいるかどうかです。」
原澤がきっちりとさつきは桐皇のマネージャーだと念押しした上でストーカー対策について話し出した。

「それで、私は考えたんだが、この中でケンカが一番強いのは誰だろうか?
ケンカが一番強い男と桃井が付き合ってるように見せてみれば、ストーカーは焦れて行動を起こすんじゃないだろうか?
その時に、一番強い男が一緒ならそいつがストーカーを返り討ちにできるだろう。
それで捕まえるんだ。
こんな根暗な事をするやつはケンカなんかできないに決まってる。」
荒木が提案する。

「それならわしだと思うんじゃが!」
そこですかさず手を上げたのは陽泉主将・岡村建一だったので全員が目を丸くする。

「岡村君、これは遊びじゃないんだけど?
もしあなたがケンカが一番強かったとしてもちょっと見た目が…桃井とあなたじゃねぇ…美女と野獣じゃないの…」
だけど誰もが遠慮して言えなかったことをずばっといったのはリコで、そこは若さゆえだろう、ありがとうとその場にいた全員が心の中だけで思う。

「それなら僕だろう。
全てに勝つ僕は全て正しいからね。」
次に手を上げたのは赤司だったけれど
「主催の赤司にそんな暇があるわけないだろう。」
と監督の白金に切り捨てられた。

「それならうちの青峰君ですかねぇ…彼、見た目も怖そうですしねぇ。
それか厳つい感じのうちの若松君ですかねぇ…。」
原澤が提案する。

「あかん、監督。
それかてどっちも美女と野獣やんか!」
反対したのは今吉。

「お前が一番強いんじゃないのか?」
海常の武内は荒木を指差し、荒木に睨まれた。

「うーん、その考えは否定しないけどねぇ〜。
けど女同士ってのは意味がないんじゃないかねぇ…。」
秀徳の中谷はそういい
「うちの宮地がいいんじゃないの?
宮地、口が悪くてすぐに手も出るし、それなのに桃井くんと並んでも野獣になるようなルックスではないよねぇ…。」
と宮地を推した。

「「なぁ、本人の意思無視していいのか?
付き合ってるふりとか、桃井は嫌がらないのか?」」
笠松と大坪は同時にそう言い、顔を見合わせる。

「確かに笠松君と大坪君のいうことも一理ある。
本人の意思はどうなんだ?」
白金が笠松と大坪の意見を認めた時、真っ青になった火神が飛び込んできた。

「桃井が倒れた…です!」
全員が大慌てで席を立った。

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