黒子のバスケ

陽泉の一日ガイド
2ページ/4ページ

「氷室さんは趣味がビリヤードでしたよね?
このショッピングセンター、ビリヤード用品の専門店がありますよ?
あと岡村さんと劉さんみたいな背の高い人用の洋服屋もありますし、福井さんの愛用してるバッシュのメーカーの海外でしか販売してないモデルが豊富に揃ってるスポーツショップも入ってますけど、見たいところとかありますか?」

それでは紫原敦を探しながらショッピングセンター内を案内してもらおうと思ったけれど、このショッピングセンターは非常に広く、全部見て回ろうと思ったら一日では到底無理なので、見るとしてもショップを絞らないといけない。
そんな話をしている時に、さつきがそう提案してきた。

背の高さゆえに市販品では合う服がない岡村と劉はその提案をすんなりと受け入れる。

福井もバッシュがほしかったのでそれを受け入れたが
「なんでオレのバッシュのこと知ってんだ?」
と聞いていた。
「キセキの世代のマネージャーはデータバスケで有名じゃろうが。」
と岡村に言われ、そういえばと福井は思い出す。
陽泉には偵察班がいて、荒木は偵察班の集めた分析して試合に生かすけれど、その荒木が
「桃井さつきか…陽泉に欲しかった」
と呟いたことがあった。
荒木が欲しがるくらいだから、彼女のデータ分析力は本物なのだろう。
それなら愛用バッシュとか趣味とかを知っているのも頷ける。

だけど何となく、自分たちのことばかり知られているのはずるいと思ったから福井は聞いていた。
「さっちんちゃんの趣味はなんなの?」
「さっちんちゃんって…それやめてくれませんか?
桃井とかさつきでいいです…。
ムッくんにもさっちんって呼ぶのはやめてっていってるのにやめてくれなくて困ってるんです!」
質問に内容ではなくて呼び方にむくれられ、さつきのふくれっつらを可愛いなんて福井は思ってしまった。

「入浴剤集めるのが好きです。」
それでも質問に答える律儀さ。
今までに福井が出会った事のないタイプの女の子だ。

「それじゃ、さつきのために入浴剤を扱ってるお店にも行こう。
確かここにはラッシュとか無印良品があっただろう?」
氷室が笑顔になる。

「そうですけど、私はいつでもこれますから。
時間があったら行くという事で。」
笑うさつきに頷いて、4人はさつきと一緒に歩き始めた。


最初に向かったのは、一番近い洋服屋だった。
せっかくだからジャンパーを買っていこうとした岡村に
「岡村さん、こういうのも似合うと思うけどな…」
とさつきが見せたのはミリタリージャケットだった。
普段の岡村だったら視界にもいれないものだけれど、さつきにそういわれて試着してみる。
「おお…アゴリラがゴリラにランクアップしてるアル…」
劉が思わずそういうくらい、そのジャケットは岡村の雰囲気にあっていた。
「そうじゃな、これにする。」
岡村自身、それを気に入って購入する事にした。

それを見て劉もさつきに洋服を一そろい、選んでもらっていた。

満足げな岡村と劉に、福井は妙にイライラしていた。
それは氷室も一緒だったらしい。
とはいえ、このショップの服は福井には少しだけサイズが合わないので急遽福井は
「さっちんちゃん、オレの服も選んでくれね?」
とさつきに言っていた。
「だから、そのさっちんちゃんってやめて下さいってば!
桃井とかさつきでいいですって!」
膨れるさつきが可愛くて、福井は思わず笑みを浮かべる。
そして
「じゃ、さつき。」
と呼びかけていた。

岡村と劉と氷室も一瞬だけおどろいたのが分かったけれど、福井は気にしない。
さつきが
「そっちの方がいいです。」
と笑ってくれたからだ。
「んじゃま、行こっかい。
このショップじゃちょっとな。」
福井は笑ってさりげなくさつきの手を握る。
そんな福井の行動にさつきはうっすらと頬を染めた。
こんな風に男の人に手を繋がれるのは初めてだった。
(こんなに可愛いのに男慣れしてねぇんだな…)
と福井が思った時、氷室がさつきの反対の手を握る。

「オレの服も選んでくれるよね、さつき。」
「あ…あの…ええ…はい…」
氷室にまで手を繋がれてさつきはおろおろしつつも頷いた。

「やるアルな…」
「ああ、あのマネージャーに惚れたようじゃな、あの二人…」
そんな三人の姿を見て、劉と岡村は呟いた。

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ