黒子のバスケ

陽泉の一日ガイド
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東京に合宿に来ていた陽泉高校バスケ部のメンバーは、一日だけ自由日をもらうことができた。

ただ問題は監督の荒木雅子が東京に全日本時代の友人がいて、その人と会いに行くというので一緒に行動をしてくれるわけではない事と、陽泉高校バスケ部レギュラーである、岡本建一、福井健介、氷室辰也、劉偉の中に東京について詳しい人がいないのが問題で、4人は仕方なく、東京出身の紫原についていくことにしたのだった。

しかし紫原が興味があるのはお菓子であり、興味がないのものにはとことん興味がないということを忘れていたのが敗因だ、と陽泉高校バスケ部副主将の福井健介は思う。


「ここはどこなんじゃ?!」
岡本は周りを見回し、首をかしげる。
ちょっと泣きたくなっていた。

「敦とはぐれたのはまずかったですね。」
氷室はにっこりと笑う。
その様子は焦っているようには見えないけれど、実は氷室自身もとても困っていた。

紫原についてショッピングセンターに来た4人は、ある意味子供な紫原にふりまわされつつもそれなりに楽しんでいたが、ふっと気がついたら紫原が消えていた。

「菓子でも持ってれば匂いに釣られて戻ってくるアル。」
劉はこの事態を深刻と思っていないらしい。

しかしこの事態は深刻だと岡村と福井と氷室は思う。
紫原はここに来るまでに合宿所からバスに乗り、電車を二回乗り換え、またバスに乗っていた。
その乗換えを誰一人覚えていない。
高校生にもなって紫原が迷子になるとは思っていなかったからだ。

「仕方ねぇ、紫原を呼び出ししてもらおう。」
福井の提案に岡村と氷室が頷き、4人はインフォメーションに向かって紫原を呼び出してもらった。
三回呼び出してもらったけれど、紫原は来てくれなかった。

「敦のことだから、何かに夢中になっていて呼び出しにまったく気がついていないんでしょうね。」
氷室の言葉に岡村と福井と、氷室自身も途方にくれた。

その時だった。
「あの…」
声をかけられ、岡村と福井と氷室と劉は振り返る。
そこにはピンク色のロングヘアでスタイルのいい、そして顔もかわいい女の子がいた。
どこかで見た顔だな…。
そう思った福井。
岡村と氷室と劉は首をかしげている。

「すみません、いきなり。
あの、私、桐皇学園高校の…」
「あっ!
桐皇のマネで元帝光のキセキの世代のマネージャーだ、確かさっちんちゃん!」
そこで目の前の女の子の事を思い出した福井は叫んでいた。

紫原がIH会場で彼女に声をかけているところを見たし、陽泉のマネージャーはお菓子をくれない、さっちんはお菓子をくれたのに、なんでさっちんは陽泉じゃなくて桐皇に行ったんだろうとと不満げに口にしているのを聞いたこともある。
彼女は多分、さっちんちゃんだ。

「ええと…はい、あの…桐皇学園高校のバスケ部マネージャーで、元帝光中学バスケ部マネージャーの桃井さつきと申します。」
丁寧に頭を下げるさつきに岡村は思わず
「あ、ええと…陽泉高校バスケ部主将の岡村建一じゃ。」
と頭を下げ、
「陽泉高校バスケ部副主将の福井健介だ。」
と福井も頭を下げ、
「陽泉高校バスケ部二年の氷室辰也です。」
と氷室も頭を下げ、
「陽泉高校バスケ部二年の劉アル。」
と劉も頭を下げていた。

「はい、知ってます。
IHお疲れ様でした。
それで、桐皇は今日は部活が休みなので私は友達とここにきてたんですけど、ムッくんを呼び出す館内放送聞いて何かあったのかなと思って…。
どうかしたんですか?」
どうやら
彼女は紫原を呼び出す館内放送を聞き、心配してくれたらしい。

「紫原とはぐれたんじゃ。」
かっことかつけてられない。
岡村には彼女が救いの神に見えた。
だからそう言っていた。

さつきは携帯を取り出して紫原にかけてみるけど、紫原は出ない。
「私も友達とここにきてたんですけど、友達が彼氏に呼び出されて帰っちゃって、ちょうど一人になったところだったんです。
もし、皆さんがよろしければなんですけど、この中案内しながらムッくん探すのお手伝いできればと思ってるんですが、どうですか?」
さつきの申し出を4人は
「「「「よろしく」」」アル!」
と受け入れていた。

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