黒子のバスケ

□青の姫君
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その日、桐皇学園は埼玉県内の高校との練習試合を終えて、電車で桐皇学園に戻るところだった。

電車内はすいていて、さつきと今日の試合のスタメンであった今吉、諏佐、若松、桜井、青峰は並んで座っていた。
一番はしにさつきが座り、その隣に今吉、諏佐、若松、桜井、青峰の順で座っている。
その向かいには原澤が座り、その隣に一軍の控え選手が並んで座っていた。

今日の練習試合のデータを作成するためにさつきはこの三日ほど寝不足が続いていてうとうとしていたが、次の駅は何本もの路線や新幹線なんかも止まる大きな駅で大勢の人が乗ってきた。
空いてる時はかまわないだろうけど、さすがにこれだけ込んできたら学生服の高校生が座ってるわけにいかないだろう。

というわけで、今吉はうとうとしてるさつきをかわいそうと思いつつも起こした。
「桃井、一般の人が乗ってきてるから立たなあかんで。」
眠そうに目を開けたさつきは
「ふぁい…」
と舌ったらずな返事をする。

その返事は今吉だけではなく、立とうとしていた諏佐、若松、桜井、青峰、原澤も聞いていた。
((((((可愛い…!))))))
その返事と、眠そうに目をこするさつきの様子に思わず今吉も諏佐も若松も桜井も青峰も原澤もそう思った。

そんな6人の様子に気が付くことなく立ち上がったさつきはふっと上を見上げて言った。
「あー、あれ可愛いなぁ…」

その言葉に全員が上を見上げる。
そこには中吊り広告があった。
化粧品の中吊り広告で、限定品のグロスの販売が開始されたというものだった。
色はピンクでいちごの香り、パッケージもいちごの形をしたグロス。
色は赤でりんごの香り、パッケージもりんごの形をしたグロス。
色はオレンジでオレンジの香り、パッケージもオレンジの形をしたグロス。
色はベージュでカフェオレの香り、パッケージもグラスに入ったカフェオレの形をしたグロス。
色は透明感のあるブラウンでチョコの香り、パッケージも板チョコの形をしたグロス。
その五種類がうつっている中吊り広告をさつきは見上げていた。
確かに、これは女の子の心をくすぐるコスメだなと、こういうものには疎い若松ですら思った。

「でも今月お小遣い…かなり使っちゃったしなー。
我慢するしかないかぁ…」
さつきは相当、そのグロスが欲しいらしい。
広告をじっと見上げながら呟いている。

寂しそうなその横顔に、全員の魂に火が付いた。
彼女が喜んでくれるなら、そんな寂しそうな顔ではなく、笑ってくれるなら、多少懐が寂しくなってもかまわない!!
そう決意した人間が、その時何人かいたらしい。
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