黒子のバスケ

何よりも君だけを
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霧崎第一高校。
お坊ちゃん・お嬢ちゃん学校なんて言われている所以は、偏差値の高さと、家庭環境に比較的恵まれた学生が多いからだろう。

その中にあって、バスケ部は異質である事を、選手兼監督を勤める花宮真は理解している。
なんせ、自分の通り名は『悪童』だ。
これはお坊ちゃん学校と呼ばれる学校に通う人間が付けられるあだ名でないだろうし、霧崎第一のバスケ部の評判は決してよいものではない。
ラフプレーや、選手の言動は褒められたものではないし、それを花宮もわかっている。
だけどそんなプレースタイルを変える気はなかった。


それを変えたのは、花宮が二年になる際にスカウトした一人の人間のせいだった。

花宮たちの一つ下の学年には『キセキの世代』とよばれる5人の選手がいて、『幻のシックスマン』がいて、その6人を支えたマネージャーがいた。

キセキの世代にも幻のシックスマンにも花宮は興味はなかったけど、データを収集し、分析して解析して絞込み、相手の成長率まで読んで対策を練ることが出来るマネージャーには興味があった。
もっというと、彼女の能力は欲しかった。

それに、彼女…桃井さつきはキセキの世代と幻のシックスマンのことを誰よりもよく分かっている上に、それでも敵になった以上は彼らに情けをかけることはないだろうと花宮は彼女を観察してきて思った。


最終的に花宮は彼女に声をかけたのは青峰大輝が桐皇学園に進学が決まったと聞いてからだった。

青峰大輝と幼馴染の桃井さつきも同じ桐皇に行くのではないかと思った花宮は早々に動いた。
一人で帝光まで行き、『霧崎第一高校バスケ部監督』として、さつきをスカウトした。

渋っていたさつきを陥落させたのは
「お前のデータは使う人間が使えばこれ以上ないものだけど、どんな努力して作ったデータも、キセキの世代には必要ねぇだろ、もう。
あいつらにデータは要らない。
だけど、オレにはお前が必要だ。
お前のデータをオレが使いこなしてキセキの世代を倒す事は、お前が霧崎に入学さえすれば可能だ。」
の言葉だったと思う。

それを聞いた彼女は顔色を失い、それでも
「分かりました、両親と話し合ってみます。」
と答えたから。


その翌日、花宮は桃井さつきの家に出向いた。
返事を聞くためだ。
さつきには連絡をせずに出向いたせいか、さつきは家にいなく、母親が出てきて
「霧崎第一高校バスケの監督の花宮です。」
と言ったら彼女の母親はひどく驚いたけれど、自分を家に上げてくれた。

やがてさつきが帰ってきて、彼女の父親も帰ってきて、三人を前に花宮はどれほど霧崎第一のバスケ部が彼女を必要としているか、待遇なんかも説明した。

両親は戸惑っているようだったが、さつきからの
「お父さんとお母さんさえよければ、私は霧崎第一に進学したいと思ってるの。
進学率もいいし。」
という言葉に頷いた感じだった。

後日改めて推薦の手順などのお話に伺いますといってお暇しようとした花宮をさつきはバス停まで送ってくると言って、花宮についてきた。

その時、さつきは言った。
「両親には心配させたくなくてあの場では言いませんでしたが、一つだけ、霧崎第一に私が進学するに当たって約束して欲しい事があります。
私は霧崎第一を優勝させるために全力を尽くします。
中学の同級生だからといってキセキの世代相手に手加減したりしません。
だからその代わり、ラフプレーは一切行わないと約束してください。
どんな天才も壊れたら確かにガラクタです。
だけど天才になるために重ねた努力は誰だって本物なんです。
その努力を他人が簡単にガラクタに変えるのは違うと思います。」

その言葉に花宮は面白いと思った。
彼女はまっすぐな目で花宮を見つめていた。
そのまっすぐな力強いまなざしに、花宮は頷いていた。

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