黒子のバスケ

あなたのためなら強くなる
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その日から二人の仲は部内の公認の仲になったけれど、一部では巨人とも言われている紫原と女子にしては高身長とはいえ、160そこそこしかない桃井さつきが並んでいると大人と子供が歩いているように見える。

とはいえ、中身は大人なのはさつきで子供なのは紫原だ。
彼は子供なので欲望に忠実だ。
練習の最中もキスをしたいと思ったら即行動する。


その日も休憩時間が赤司から告げられ、部員にタオルを配ったあと、赤司から練習中に気がついたことがあるかを問われたさつきがボードを示しながら赤司に何かを話しかけた時、二人は自分達が影に覆われたことに気がついて顔を上げた。
そこには紫原が立っていた。

「スポーツドリンク足りなかったの?」
さつきは紫原にそう聞きながらドリンクの入ったボトルを取るために手を伸ばそうとするけれど、その手を紫原は押さえて
「たりないのはさっちん。」
と答え、さつきを抱き上げた。

「!?」
声にならない赤司とさつきとバスケ部メンバー。
そんなみんなの前で紫原はさつきを軽々と抱き上げ
「さっちんはちっさいねぇ…」
と言う。

「ちっちゃくないよっ!
ムッくんが大きすぎるんだよ!
それより下ろしてよ!」
さつきはいきなりの紫原の暴挙に真っ赤になって叫ぶ。
そんなさつきの唇に紫原は自分の唇を重ねた。

「………?!」
沈黙が体育館を支配する。
キスをされたさつき自身も目を白黒させている。

ただ一人、落ち着いているのが紫原で
「うん、やっぱりさっちんは可愛いね。」
なんて満足げにしてそのままさつきを抱きしめた。

誰が見てもその力は強いだろうと思われ、いきなりのキスに驚いていたバスケ部メンバーは我に返る。
「敦!
力を緩めるんだ、さつきが死ぬ!」
赤司が叫びながら紫原の腕を叩き、青峰もそれに加勢する。
紫原はゴールポストを破壊する程の力をもつ男だ。
「「さつきがつぶれて死ぬから!!!」」

赤司と青峰が同時に叫び、黄瀬と緑間と黒子も慌てて止めようと走り出した時、紫原がさつきを離した。

さつきは真っ青な顔で紫原が離すと同時にふらりとよろけた。
それをあわてて紫原が支える。

「大丈夫だよ、ムッくん、ありがとう。」
さつきは青い顔をして笑い、それをみた赤司は
「敦、さつきは女性でお前は普通の男性より力が強いんだから気をつけなければダメだ。」
と言っていた。

「そうだ、さつきを殺す気か!」
青峰もそれに追随する。

「そうっスよ、桃っちが死んじゃったらどうするんスか?」
黄瀬は心配そうにし、緑間は
「力加減をするのだよ!」
とめがねを押し上げ、黒子は
「大丈夫ですか、桃井さん?」
とさつきを心配している。

さつきを困らせるつもりはなかったのだけど周りがさつきを心配したり、紫原を怒るので紫原は何か悪い事をしたのかもしれないと思い、腕の中のさつきに眉を下げて謝った。
「さっちん、ごめん…」

「大丈夫だよ。
赤司くん、青峰くん、ミドリン、きーちゃん、テツくん。
女の子は好きな人のためなら強くなれるんだよ。
私、これくらいで死んだりしないから平気だよ!」
そんな紫原にさつきは笑いかけ、赤司と青峰と緑間と黄瀬と黒子に視線を向けた。
びっくりする5人と対照的に、紫原は嬉しそうに笑い、さつきも紫原に向かって微笑んでいる。

「さっちん、可愛い!」
紫原は再びさつきを抱きしめた。
強く。

「やはりさつきが「やっぱさつきが「桃井が「桃っちがぁ「桃井さんが死ぬからやめろー!!」」」」」
赤司と青峰、緑間と黄瀬と黒子は叫んでいた。

だけど紫原に強く抱きしめられ、その腕の中でさつきは苦しそうにしながらも嬉しそうに紫原の背中に腕を回していた。

END

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