黒子のバスケ
□あなたのためなら強くなる
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紫原敦はお菓子以外に興味のない人間だった。
桃井さつきは色々なものを抱え込んでいるけれどそれに優先順位をつけて進めていくことが出来る人間だった。
そんな桃井さつきの中で紫原敦は優先順位がそんなに高くはなかったように思う。
だから部活が終わった後、赤司の元に二人が揃って来た時は何事かと赤司は身構え、他の人間も興味しんしんといった感じで二人を見ていた。
自分達がみんなの注目を集めている事を知ってかしらずか、紫原がいつもの間延びした口調で告げた。
「さっちんとねー、付き合うことになったんだー。
そんで一応、赤ちんには報告したほうがいいかなって。」
「そうか、それで桃井はどこに付き合うんだい?」
赤司は頷いてさつきを見る。
「え…?」
赤司の問いかけにさつきは目を丸くしている。
「え?」
さつきの様子に赤司は再度聞き返していた。
「付き合うってそういう意味じゃないんだけどー?
恋人になったってことだよー。」
赤司の疑問に答えたのはさつきじゃなくて紫原だった。
「そうか、恋人か。
それはおめでとう。
…………………………おめでとうっ?!」
赤司征十郎は人生で初めて驚愕に目を見開き、叫ぶという状態に陥ってしまった。
が、この珍しい現象に誰も気がつけないほど、帝光バスケ部のメンバーは驚いていた。
今、紫原敦はなんと言った?
桃井さつきと恋人になったと言わなかったか?
「なんか、改めて言葉にすると恥ずかしいね…」
間違いだ、なんかの間違いだ、そう思う帝光バスケ部メンバーだったが、さつきが頬を染めて紫原に笑いかけるのを見てしまった。
だれより早く行動を起こしたのは青峰だった。
黄瀬を思いっきり蹴飛ばした。
「いってぇぇぇ!
いてぇっスよ、青峰っち!!」
驚いて声も出ないところを蹴飛ばされて、黄瀬は思わず大声を上げていた。
「夢じゃねぇんだな…」
その様子を見て青峰は呟く。
「ひどい男なのだよ、青峰は…」
緑間がその姿を見てようやく自分を取り戻し、青峰を呆れたように見た後、紫原に向き直る。
「恋人ということはすなわちお前と桃井は恋仲にあるということでいいんだな?」
「だからさっきからそう言ってんじゃん」
緑間の念押しに紫原はうんざりした顔で頷いた。
「そうか…僕とした事がつい取り乱してしまった。
それはおめでとう…」
赤司は緑間と紫原のやり取りを聞いてようやく平静をとりもどす。
なんと言うか、意外な組み合わせだけれど様子を見る限りじゃお互いに想い合ってるみたいだし…。
「部活に支障が出ないのならば、僕から言う事は何もないよ。」
帝王が許可を出したのだから、それ以上は誰も何もいえなかった。