黒子のバスケ

春宵道中
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遊女の誠と四角い卵あれば晦日に月が出る



陰暦では月末は月がでない。
もしそれがあるとしたら驚きに晦日の月が出てしまう、それくらい遊女には誠がないし、四角い卵もないという意味の言葉だ。

そう、遊女には誠がない。
誠なんかなくていい、だけど誠があるように見せかけなくてはいけない、姉女郎はさつきにそう教えてくれた。

そして姉女郎はこうも教えてくれた。
間男なんて作ったら遊女は破滅するだけだと。

桃井さつき…現在は総籬の大見世、桐皇屋のお職である桃花太夫はその教えを今も守っている。

だってそう教えてくれたはずの姉女郎は、間男と心中した。
お歯黒どぶに男と共に浮かんだ姉女郎の姿にさつきは呆然とした。

裕福な家に生まれたさつきは、父が事業で失敗したので借金のカタに10才の時に売られた。
家が裕福で様々な習い事をしていたことと、見た目がとても美しかった事で、さつきはこの花街一番の大見世に高く売られた。

姉女郎に禿としてついたさつきに姉女郎は色々親切にしてくれた。
禿や新造の面倒を見るための費用だって姉女郎が出さなければならないのに、それでもさつきの姉女郎は優しくて、さつきは彼女を本当の姉の様に慕っていた。

その人が心中して、さつきは心に誓った。

私は絶対に恋なんかしないし、生きてここから出て行くと。

その努力の結果、太夫と呼ばれる最高位の遊女になった。

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