黒子のバスケ

□坊ちゃまの言う通り!W
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「伴侶となる女性を得たのだから、家を継ぐための勉強もしっかりしろ。
お前なんか、見た目ただの目つきの悪い野生児じゃないか。
さつきちゃんの方がよほど良家の子女に見えるし、パーティとかに出ているうちに誰かに掻っ攫われたらどうするんだ?
実際、征十郎君とか真太郎君とか涼太君の方がさつきちゃんとつりあい取れてるだろ?」

父親の言葉に青峰はいやいやながら、家を継ぐために勉強を始めた。
青峰の家は代々政治家を輩出している政治家一族だ。
内閣総理大臣経験者も何人もいて、祖父も総理大臣の経験があり、父は現在外務大臣をつとめている。

それがなくても両親もさつきも英語とフランス語とドイツ語をしゃべることが出来る。
青峰は英語ですら危ういけれども。

それでさつきに愛想を付かされてはたまらないから努力をする事にした。


その自分の姿を認めてくれたのか、父が日本で一番高級なホテルで青峰とさつきの婚約披露パーティをしてくれることになった。

その日、青峰は光沢のあるミッドナイトブルーのタキシードを着ていた。
自分の父親にすら野生児と言われてしまう青峰だけれども、体格がいいのと目つきは悪いけれども顔はイケメンなのと、野生児の割には場慣れをしているせいか、その姿は様になっていた。

さつきの方は母が支度を手伝っているということだった。
さつきのドレスは母がオートクチュールで作らせたと聞いている。

それにこの日のためにエステだ何だと母はさつきを連れ出していた。
母は性格はあれだけれどもセンスは抜群にいい。
どんなドレスを着て現れるんだろう、そう思ってた青峰は準備ができたといって入ってきたさつきの姿を見て呆けた。

胸は大きく、そのくせ無駄な脂肪は一切なくて腰は細くくびれているさつきの体のラインにフィットしているライトブルーのドレスはシンプルな形だった。
シンプルだからこそ、さつきのスタイルのよさが際立っている。
下ろすと艶やかな髪は今は巻き上げられ、ダイヤをちりばめた髪飾りが付けられている。
首にはダイヤのネックレスが飾られ、耳元ではダイヤのイヤリングが揺れている。
綺麗に施された化粧はさつきを普段よりずっと大人びて見せた。

「おま…誰?」
青峰はそう言って母に殴られた。
「こういう時は綺麗だなって言うものなのよ!
なんっで本当にこんな馬鹿に育ったのかしら?!
さつきちゃんがアンタに愛想つかしたらどうするの?!
さつきちゃんが結婚してくれなかったら、あんたなんかお嫁さんに来てくれる人いないんだからね!」

「両親揃ってどこまで息子を落とせば気が済むんだよ?!」
青峰は思わず青筋を立てて怒鳴っていたけれど
「大ちゃん、自分の両親にそんな言い方よくないよ。
おばさま、大丈夫です。
大ちゃんが私に愛想をつかすことはあっても、私が大ちゃんに愛想を尽かすことなんてないです。」
さつきが青峰の手をそっと握った。

それで青峰は怒りが鎮まる。
自分でも単純だと思う。
だけどさつきのその言葉に青峰は気持ちが落ち着いていく。
思わず青峰はさつきの手をぎゅっと握り返していた。

「ありがとう、さつきちゃん。
本当にありがとう。
大輝『なんか』をそこまで思ってくれて…!」
また息子をそこまで落とすか…?!
すげぇテンション下がる…青峰は感動してる母の言葉に顔をしかめつつも、さつきの手を握ったままだった。

「大輝、今日はお前の婚約披露パーティであると同時にお前自身のお披露目も兼ねている。
分かるだろう、これからお前は青峰家の人間として、政界に進出していかなければならない。
そしてさつきちゃんはそんな大輝を支えていく妻として、政治家の妻となっていくためのお披露目を兼ねている。
それをきっちりと覚えて置くように。」
手を握りあっている二人に青峰の父が言う。

青峰の両親は、政略結婚ではなくて恋愛結婚だ。
それでも青峰の母の実家は旧華族で、青峰家に嫁ぐのに何の申し分もなかった。

が、さつきは違う。
旧華族でもなんでもない。
政治家の娘や孫でもない。
だからこそ、あんな嫁をもらったからいけないんだと言われないように、青峰はものすごい努力をしていく必要がある。
そう父から言われている。

そしてもちろん、そのつもりだ。
さつきのためなら、どんな努力だって出来る。
高校に進学する時にさつきを失うかもしれない恐怖を味わった。
それに比べたら家を継ぐための努力などなんでもない。

「分かってんだよ、そんなことは。」
青峰はさつきの手をさらに強くギュッと握る。
絶対に離さない、この手だけは。
何があっても。
青峰はそんな覚悟を決めていた。
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