黒子のバスケ

キセキの借り物競争
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「桃井さーんっ!!」
「桃井さーん!」
校庭には男子の声援が飛び交う。

今の競技は応援合戦
赤組の副応援団長としてさつきは学ランを着て太鼓を叩いている。
団長はもちろん、赤司。

いつもより高い位置でのポニーテールにハチマキを巻いてるさつきの学ラン姿は凛々しくて、学ラン姿の応援団長・赤司が女子の黄色い声援を集めているように、男子の声援を集めていた。

「これでぜってー応援合戦、赤組の優勝だろ。」
青峰はそれを見ながら、隣にいた緑間に話しかける。

「そうだな、さすが赤司だ。
桃井に露出をさせることなく、優勝を狙うとはあざといのだよ。」
頷く緑間に黄瀬が相槌を打つ。

「ほんと、さすが赤司っち、あざといっス。」

「それにしてもさ…黒ちんどこにいんの?」
紫原の疑問に三人は初めて黒子が見当たらないことに気が付いた。

「「「あ…」」」

「まぁ…黒子がどこいるかは置いておいて、この後はいよいよ借り物競争だな。」
緑間が微妙になった空気を取り繕うようにめがねを上げた。

「全員が同じ組では走らないっつーのもすげぇよな。」
青峰の言葉に4人は強く頷いた。

借り物競争には青峰も緑間も黄瀬も紫原も赤司も黒子も出場するけれど、キセキの世代だけに奇跡的に、同じ組で走らずにばらけて走ることになっている。

そんな事を話しているうちに応援合戦は終わり、借り物競争に出場する人は入場門に集まるようにとのアナウンスが入る。
学ランを脱いでさつきに預けた赤司と黒子が入場門に向ってくるのも見えた。

「さつきに学ラン着せるとかきたねーだろ、あんなん見たらぶっちぎり赤組1位に決まってじゃねーか。」
後ろにいる赤司に向って青峰が文句を言ったら
「何を言ってるんだ。
真太郎と大輝が学ランで応援団長・副団長を務める青組に黄瀬が応援団長で学ランを着て、敦が副団長でドレスを着て『白組勝てばいいじゃなーい』と決め台詞を言う白組に勝つためには、赤組は妥協をしないんだ。
すべてに勝つ僕はすべてに正しいんだから。」
と赤司はしらっとした顔をしている。

まぁたしかに…紫原のドレスはやりやがったな、白組とは思ったけど…。
その時、入場行進が始まった。

第一走者の中には黄瀬がいる。
ピストルの音と共に走り出した黄瀬は、トップで借り物を書いた紙の前までついて、紙を拾い上げた。

それを確認した黄瀬はまっすぐにさつきに向かって走っていく。
そして驚いた顔をしてるさつきに向ってしゃがみこんで背中を見せた。

「早く、桃っち早く!」
黄瀬の声が聞こえる。
その声にさつきは慌てて黄瀬の背中に乗った。

黄瀬はさつきをおぶって走り出す。
校庭はモデルの黄瀬が学ラン姿のままのミス帝光をおぶって走り出したことに騒然としたが、黄瀬は
「しっかり捕まってるんスよ!」
と叫び、すごい速さで走り出す。

「きーちゃん早いっ!」
さつきは叫びながら反射的に黄瀬の首に腕を回した。

校庭には女子と男子の声が入り乱れているが、黄瀬はさつきを背負い、トップでゴールした。
審判からOKが出て、黄瀬は1位の旗の下にさつきといる。

黄瀬がさつきをおぶってゴールした事の興奮冷めやらないなか、第二走者がスタートする。

第二走者の中には紫原がいる。
紫原はその長い足で本気で走っているようには見えないのにぶっちぎり1位で紙を手にした。

それを見ると紫原はトラックを突っ切ってさつきのもとに行くと、さつきを抱え上げた。
「ムッくん!!
苦しい、苦しいよー。」
さつきが叫ぶが
「あのね、抱え上げて連れて来いって書いてあんの。
多分さっきの黄瀬ちんもおんぶでって書いてあったんだよ。」
と紫原がおっとり言い返す。
そのまま、1位でゴールして審判からもOKがでた。

それで黄瀬がさつきをおぶったわけが分かった。
「人だと運搬方法が指定してあるのか…」
「お父さんをお姫様抱っことかだったらどうするよ…?」
何て言ってた第三走者がスタートを切った。

その中には黒子もいる。
黒子は三番目に紙を手にすると、すぐにゴールで紫原といるさつきの元に向い、その手を引いて走り出した。
紙を手にしたのは三番目だったが、他の走者が借り物に手間取ってる間に黒子はトップでゴールした。

次の走者は緑間で、緑間も紫原と同様、足が長いので歩幅が広い上に、人事を尽くして走ったのでぶっちぎりのトップで紙を手にし、紫原、黒子と同じく、黒子と一緒にゴールにいたさつきの元に行き、さつきを抱き上げた。

指定されていると分かってはいても、校庭からは声が上がる。
緑間羨ましいとか、桃井さんいいなぁ、とかの声だ。
さつきはもちろん、緑間はあの性格でもルックスが端正なので『遠くからめでたい男子』として女子に密かな人気がある。

その緑間がさつきをお姫様抱っこし、さつきも三回目だから心得たのか緑間の首に腕を回して大人しくしている姿が様になっている。
緑間はさつきを気遣ってか、先ほどよりスピードは落としていたけれど、それでもダントツでゴールした。

オレにもさつきを姫抱っこって借りもんの紙あたんねーかな、そう思いながらピストルの音と共にスタートした青峰が他の走者を突き放して1位で手にした紙には
『大好きな人を姫抱っこで借りてきてください』
と書いてあった。

青峰は迷わず緑間の隣のさつきのところに行く。
「行くぞ、さつき。」
言うが早いか、青峰はさつきを抱き上げた。

「大ちゃんもなの?!
なんなの、なんて書いてあったの?!」
「うるせーな、気にすんな!」
「いいじゃない、みんな人のこと借り物競争に借り出したのに紙見せてくれないんだよ。
ひどくない?」
と言うさつきに
「走ってんのにそんなしゃべってっと舌噛むぞ!
黙ってろ。」
と青峰は加速する。

1位でゴールした青峰は審判に紙を見せた。
「OK、1位は青組です!」
審判からOKが出たのを見て、さつきが審判の手元を覗き込もうとしたので青峰はそれを邪魔した。

「ねぇ、なんて書いてあったの?
教えてよー」
と言うさつきに
「気にすんな」
と青峰が言った時。

「さつきっ!」
気が付いたら赤司が後ろにいた。
「早く僕の背中に負ぶさってくれ!」
赤司の勢いにさつきは慌てて赤司の背中に乗る。

ぶっちゃけさつきと赤司はそんなに身長は変わらないから、さつきをおんぶとか赤司大丈夫かと青峰は思ったけど、赤司は涼しい顔してさつきをおぶったまますごいスピードで走り始める。
そして1位でゴールした。

「OK、1位は赤組です!」
審判の言葉にさつきは赤司に聞く。

「ねぇ、赤司くん、借り物なんだったの?」

「世界で一番愛しいと思う女の子をおんぶして連れて来て下さいだよ。」

赤司はにっこりと笑ってさつきのポニーテールを撫でた。
さつきは顔が真っ赤にしたけれど
「うそ、そんなこと書いてあるわけないよ!」
と言い返している。

「ああ、嘘。
自分の部活のマネージャーをおんぶでって書いてあったよ。
だけど僕にとってさつきは世界一愛しい女の子だよ。」

「ありがとう…」
さつきは真っ赤になって赤司に礼をいった。

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