黒子のバスケ

最善の選択
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「さつきがオレがバスケをしてるとこをすっげぇ嬉しそうに見てんだよ。
なんか今まで、いつも苦しそうにしてたのに。
その顔がすげぇ可愛くて…っつかあいつってあんなに可愛かったか?」

黒子と緑間と黄瀬と青峰はマジバにいた。

四人とも学校がテスト期間に入り、成績のそんなによくない黄瀬が勉強を教えて欲しいと緑間と桃井に連絡を取った。
それでテスト期間はキセキの世代の関東在中組は火神を交えたりしながら勉強会をしていた。

今日はさつきは用事があると言って来てないが、だからこそ青峰は本音がいえたのだとも言える。
青峰の言葉に緑間も黒子も黄瀬もきょとんとしていたが、青峰の言葉の意味が分かったらしい黄瀬が笑みを浮かべた。

「桃っちはふつーに可愛いっスよ。
けど、青峰っちの可愛いは多分そういう可愛いじゃないんスね。」

「桃井の容姿は変わっていないのだよ。
にも関わらずお前がそう思うのなら、それは桃井が変わったのではなく、お前の桃井に対する気持ちが変わったのではないか?」
緑間がメガネを押し上げる。

「そうですね、でもよく考えて下さい、青峰君。
君達はみんなバスケに対しても、バスケをしている大勢の人に対しても傲慢で、不誠実で自分勝手でした。
実際最後の全中のせいでバスケをやめてしまった人を僕は知っています。
それでも桃井さんは君を心配だからと、進路を迷わず桐皇に決めたんですよ。
今までずっと黙っていましたが、実は僕は中学の時に桃井さんに一緒に誠凛にきませんかと言ったことがあります。
だけど桃井さんは『大ちゃんが心配だから桐皇に行く』と答えたんです。
今までずっと、彼女はどんな時も青峰大輝を本当の意味で孤独にしなかった。
そのことは青峰君だって本当は分かっているんでしょう?
だったらこれからは君が彼女のそばにいるべきじゃないんですか?」
黒子がバニラシェイクをすすりながら青峰をじっと見た。

「え?
桃っちそんなこと言ったんスか?
「桃井がそんな事を言ったのか…」
黄瀬と緑間が驚いて黒子を見る。
「はい。」

「でもさつきはテツのこと好きだろ?
なんでテツに誘われたのに断ったんだよ。」

青峰だけは複雑な顔をしている。
さつきを可愛いと思うようになってからずっと、黒子を好きだと言うさつきの言葉になんだかイラついていた。

だけど黒子を好きだと公言してるさつきが、黒子に誘われたのに同じ高校に行かなかったなんて信じられなかった。

「桃井さんの僕への気持ちは恋愛感情じゃないんですよ。
彼女と僕は似ている。
彼女は僕の中に自分を見ていて、それを好きだと思ってただけです。
よく思い出して下さい。
君達が僕と桃井さんに謝ってから、桃井さんは僕に一度も好きだといってませんよ。」

言われて思えば確かにそうだ。
いつもいつも黒子を好きだといっていたさつきのイメージが強くてそう思っていただけで、自分達の和解以降、さつきが黒子に好きだと言ったのを見た覚えがない。
黄瀬も緑間も青峰も納得した。

黒子はそんな三人の顔を見ながら続ける。
「桃井さんの青峰君への気持ちが恋愛感情かどうか、それは僕には分かりません。
けれど、桃井さんの高校選びは青峰君ありきでした。
彼女は自分の高校生活の三年間を君のために使うことを決めたんです。
その気持ちが軽いものだとは思えません。
そしてその桃井さんの献身がいつまでもいつまでも君に注がれると思ったらそれは間違いです。
この世に絶対なんてありません。
当たり前のものなんて何もないんですよ。
それに気がつくか、気が付かないか。
それだけで未来が変わることだってあるんです。
そのことを忘れないで下さい。」

「おう…」
「分かっている。」
「了解っス。」

黒子の言葉は青峰だけじゃなく、緑間と黄瀬の胸にも響いた。

確かにそうだ。
自分が今手にしてるもの全て、当たり前に存在してるわけじゃない。

だから、大切にしよう。
日常を。
緑間と黄瀬はそう思った。

そして青峰はさつきの顔を思い浮かべた。
あいつのいない未来なんて想像もできない。
だけどオレが想像もできないだけで、さつきはテツを好きになったように、他の男を好きになって自分から離れていくかもしれない。

……そんな未来は欲しくない。
だから、青峰は決めていた。
さつきとできるだけ長く一緒にいられるような未来のために、最善の選択をしようと

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