黒子のバスケ

□幼馴染じゃいられない
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キセキの世代とよばれた5人が幻のシックスマンである黒子と、その新しい光である火神のお陰で再び絆を結んでから、キセキの世代は火神や高尾や桜井や氷室などの自分達の高校のメンバーも加えて新たな絆も結び、よく集まるようになった。


そんな中で、さつきは分かった事があった。
黒子への恋…それは恋じゃなかった。
憧れでもない。
黒子は自分の『希望』だった。
パスと一緒にみんなのほどけてしまった絆を繋ぐ…さつきにとってはそんな希望だったということに。

そしてさつきの本当の好きはずっとずっと、青峰にあったんだということに。

黒子がみんなの絆を結びなおしてくれて初めて気が付いた。
だけど、あれだけテツくんがテツくんが騒いでおいて今更青峰を好きだ何て言えない…。


言えないまま、さつきは青峰と同じ大学を選んで相変わらず幼馴染として誰よりも近くにいたけれど、青峰は大学二年になってすぐ、アメリカに留学する事になった。

「さつき、お前も一緒にアメリカにくっか?」

青峰はそう言ってくれたけれど、さつきはそれを断った。

青峰にはきっと、一生、好きだと言えない。
言うつもりはない。
言うつもりはないのに、一生青峰のそばになんていることはできない。
今は一緒にアメリカに行ってそばにいるんでもいいけど、いつか青峰に恋人ができたとしたら…。
その人と青峰が結婚すると言ったら…。
その時に笑顔で祝福する自信がない。
だから、さつきは青峰とは一緒にアメリカに行く事を選ばなかった。

青峰は
「あっそ。」
と言っただけで、さつきに何の約束も残さずにアメリカに発って行った。



それからずっと、青峰の方からさつきに連絡はない。
さつきも青峰には連絡をしていない。
お互いに連絡を取らないまま、さつきは大学を卒業して私立の男子中学の数学教師に、青峰は大学卒業後、NBAで活躍している。

赤司は家を継ぐために今は赤司財閥の系列の会社のいくつかを経営し、緑間は私立の高校の数学教師に、紫原は調理師に、黒子はベストセラー作家に、黄瀬は芸能界で今は役者として活躍して、火神は青峰と一緒にアメリカに留学し、NBAで青峰と同じチームにいる。
高尾は大手企業の営業、氷室と桜井は日本のプロバスケリーグで活躍している。

みんなそれぞれ忙しいのに、久しぶりに召集が赤司によってかけられたこと、そして赤司たちが怒っている理由をさつきは分かっている。
分かっているから、彼らと目を合わせることをしようとしなかった。


勤めている学校ではまだ若いからという理由でさつきは担任は持っていないけれど、三年生の副担任をしている。
さつきが大学卒業をしてすぐに教員試験に通ったのは、それなりにレベルの高い大学の教育学部を首席で卒業したためだ。

それと中学・高校・大学とバスケ部のマネージャーを続け、それなりの成果を残しているさつきを学校側がバスケ部の顧問にしたかったという理由もあった。
さつきもそれを快諾したが、男子中学がさつきの就職先と聞いた全員がそれに反対した。
さつきの容姿は男子中学生には刺激が強すぎると思うからだ。
それに私立の伝統ある男子校だけあって教師も男性、しかもどちらかというと年配者が多い。
さつきが肩身の狭い思いをするんじゃないだろうか、彼らはそう心配したのだ。

それでもさつきはその中学に就職し、問題なく過ごしていた。
高校教師をしている緑間はできないが、赤司や黄瀬や紫原や黒子や氷室や高尾や桜井がたまにコーチに来てくれるから、自身が顧問をしているバスケ部もそれなりの結果を出せた。

仕事は順調で充実している。

だけど、青峰がそばにいない。
もう、別々の人生を歩んでいて、幼馴染だった自分達の人生が再び交わることはない。
自分がそういう道を選んだのだから。

分かってはいるけれど、仕事が順調で毎日が充実していて、だからこそふとした時に感じるその事実が悲しくて、虚しさを覚えていたそんな時に、写真週刊誌にアメリカにいる青峰の熱愛記事が載った。
日本でも知名度のあるアメリカのガールズバンドのボーカリストと腕を組んで歩いている写真と
『日本人初のNBAプレイヤー青峰大輝に熱愛発覚!
英語が苦手な青峰大輝がジェスチャーで彼女とコミニュケーションを取る姿は微笑ましかった。』
という記事が添えられていた。

それを知ったキセキの世代のメンバーや高尾や桜井や氷室は
『何かの間違いだと思うよ』
とメールをくれたが、さつきはどうにも返信する気になれなかった。

ボーカリストは青峰が大好きな堀北マイに似ていたし、青峰の好きな巨乳だし、そもそもあの青峰が腕を組まれても振り払わないなんて本当に好きだからだろう、さつきにはそう思えた。

火神からも国際電話や携帯に電話やメールもあったけれど、出る気にならなくて
「ごめんね、最近仕事忙しくて疲れてるから時間取れたらこっちから連絡するね。」
とメールした。
それから火神からの連絡は来なくなった。

青峰からはもちろん、連絡はない。

自分で青峰についていかないと決めた。
もう自分と青峰の人生は交わらない、それが誰より分かっていたのに、実際に目の当たりにするとこんなにも胸が苦しい。
未練がましいけれど、私まだ大ちゃんが好きなんだ。
そう思っても諦めるしかない。


心配してくれるみんなに大丈夫と言いながら、仕事は充実してるけど虚しくて胸の痛い日々を送っている時だった。

バスケ部の部長をつとめる生徒の父親から大会の後で食事に誘われた。
さつきはそれをあっさりと受け入れた。

部長の父親と言う事で部員達の親を取り仕切って車を出してくれたり、差し入れをしてくれたり、そのために個人的にメールアドレスを交換していたその父親と何度か食事に行くうちに、ホテルに誘われて関係を持った。
別にその人を好きだったわけじゃない。

だけど寂しさから身を任せて、不倫になるのは分かってたけどそのままずるずると関係を続けていた…ことが昨日、赤司にばれてしまったのだ。

その生徒の親と一緒に食事をしているところを、仕事の接待でそのレストランに来た赤司に見られてしまったのだ。

昨日の夜のことだったのに、赤司の手回しは早かった。
すぐ全員に招集をかけ、さつきを呼び出した。
さつきが逃げないよう、黒子を学校まで迎えに来させる念の入れようで、断る事もできないまま、この状態。

一度は仕方なく顔を上げたものの、赤司と黄瀬と紫原と黄瀬と緑間の顔に再びさつきは顔を俯かせた。
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