黒子のバスケ

アフロディーテの恋人
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赤司と一緒に二人でお弁当を食べた後、赤司がバスケ部の監督に呼ばれてると言うので、さつきは赤司と別れて旧校舎に向っていた。

『旧校舎の音楽準備室で待ってる。』

三時間目が終わったあとの休み時間に緑間から送られてきたメールに、緑間は赤司が昼休みに監督に呼び出されていることを分かってたんだなと思いながら、さつきは旧校舎に入り、音楽準備室をに向って歩く。

今は使われていない旧校舎は誰もいないから昼休みなのに静まり返っていてなんだか非現実的な空間みたい、そんなことを思いながらさつきは音楽準備室のドアを開けた。

先に来ていた緑間は窓辺に立っていたが、さつきがドアを開けた音に気が付いて振り返り、さつきに向って歩いてくる。

さつきはドアを閉めたものの、そこから一歩も動けない。
だけど緑間はそんなことは気にせず、さつきの前まで歩いてくるとそのままさつきを抱き寄せた。


赤司と付き合ってるさつきが緑間とひっそりと二人きりで会うようになったのは一ヶ月前のある出来事がきっかけだった。
その日、赤司は監督やコーチと泉真館高校のバスケ部の見学に行って、そのまま家に帰ることになっていた。
監督もコーチもいないから練習は五時までで自主練はさせてはいけないと緑間は赤司からと言われていて、さつきもそれを知っていた。
だけど緑間が一人で全ての体育館を回るのは大変だろうと思い、さつきもそれを手伝った。

その後、部誌の確認のために部室で緑間を待っていた。
そこで話をしてるうちに緑間に押し倒された。
最初は抵抗はした。

だけど自分を押し倒した緑間がしている事はひどい事なのに緑間はすごく幸せそうに笑っていて、何度もさつきに好きだとか愛してるだとか囁くので、抵抗しきれなくなってしまった。
赤司に悪いと思いながらも、緑間を拒みきれなかった。

拒みきれない=受け入れてしまったという事で。
あれは無理やりじゃなかった、さつきはそう思ってる。
あの誰よりも自分に厳しい男が、滅多に笑ったりしない男が、本当に幸せそうに笑っていた。
初めてみたあの笑顔に、さつきは見とれてしまったのだ。

最終的には合意の上の行為になってしまったあの日以降、こうして緑間と二人きりでひっそりと過ごす時間を重ねていた。

だけど、赤司をこれ以上は裏切れない。
誰にも分からないように二人きりで会いながら赤司と付き合ってる今の状況に、さつきは罪悪感でいっぱいだった。

「ねぇ、もうこういうのよそう?」
さつきは緑間の腕の中でそう呟く。

「だったらなぜお前はオレに呼び出されるたびに来るのだよ?
イヤだったら、来なければいいだけだろう。
だけどお前はオレに呼び出されれば、こうしてオレに会いにくる。
それはオレとこうする事がイヤじゃないからだろう?」

緑間の腕の力が強くなって、さつきは窒息しそうなんて頭の隅で考える。
そして緑間の言う事は正しいんだろうとも思う。

イヤだったら無視すればいい。
緑間は来なかったら赤司に自分達の関係を話すとか言ったことはない。
赤司と別れて自分と付き合えと言った事もない。

ただ待ってるとメールしてくるだけで、行くか行かないかはさつき次第、なのにさつきがこうして緑間に会いに来ているだけなのだから。

「自分がこんなにどうしようもない女だったなんて思わなかった…」
思わず漏れた言葉が本音だ。
赤司と付き合っているのに、緑間ともこうして会っている。
会えばすることなんか決まってるのに、それでも会いに行ってしまう。

「オレだって自分がこんなにどうしようもない男だったなんて思わなかったのだよ。」

真上から降ってきた声に顔を上げる。

緑間がさつきを見下ろしていた。
その目は思っていた以上に優しくて、だけど赤司だって自分といる時は優しい目をして自分を見てくれている。

こんなの、よくない、いいわけない。

分かってるのに、緑間の顔が近づいてくるのに気が付いてさつきは目を閉じた。
柔らかい唇が自分の唇に重なって、すぐに自分の中に入ってきた舌に舌を絡ませて、リボンタイが解かれるのを分かっていながら、緑間の背中に手を回してブレザーを握り締めていた。

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