黒子のバスケ

あなたに出会えた幸せ
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「で、一年後はなぜかこうなっていると。」
目の前で微笑むさつきに高尾は頷く。

今日は高校に入って二回目の高尾の誕生日。
部活の終わった後、高尾はさつきの部屋にいた。
今日はさつきの親がいないからということで、高尾はさつきの部屋にお邪魔していたのだ。


あれから緑間に頼み込んでさつきのメルアドを聞きだして、キムチのお礼がしたいと言って二人で会った。
それでますます彼女を好きになった。

高尾にとって驚きだったのは、彼女も以前から自分に好意を持っていてくれていたということが分かった時だった。

「だって高尾くんって明るいし、いつも笑ってるでしょう?
そういうのいいなぁってずっと思ってたの。
ほら、私の周りには高尾くんみたいに朗らかで明るい、一緒にいるだけで楽しくなれる男の子いないから。」

まぁ確かに、真ちゃんはあんなんだし、黒子は無表情だし、青峰は暴君だし、黄瀬は先輩にしばき倒されている残念なモデルだし、紫原は何考えてるからわかんないし、赤司は天帝だもんな。

でもそれって、要するに脈ありじゃね?
ということで、何度か二人で会ううちに好きだという気持ちを抑え切れなくなって告白したら
「私も高尾くんが好きです。」
なんて潤んだ瞳で見上げられて、高尾はその場でバク転しそうになったほど喜んだ。

緑間は祝福してくれた。
「桃井を泣かしたら許さないのだよ、だけどまぁ高尾なら桃井を泣かせたりはしないだろう。
オレ達は桃井に心配ばかりかけてきたから桃井を頼む。」
と言って。

意外だったのは、黄瀬と黒子も桃井さんが幸せになるのならこれ以上嬉しい事はないと祝福してくれたこと。

ただ、その他のキセキの世代は自分達の付き合いに反対だったようで、赤司と青峰と紫原が秀徳に乗り込んで来た時は、さすがに大坪さんも唖然としてたっけ…。
緑間がこっそりとさつきに連絡を取り、駆けつけたさつきが自分より背のでかい男三人を怒ったあとなだめすかして、謝罪させて連れて帰っていった。
しかも、そのまま三人を説得してしまったのだ、彼女は。

「私は本当に和くんを好きなの。
大好きなの。
赤司くんや青峰くんやムッくんが反対しても、関係ないもん。
それでも反対するなら、もう口聞かないもん!」
と言ったらしい。

騒ぎを聞いて駆けつけた黒子から
「本当に桃井さんは高尾君を好きなんですねぇ。
桃井さんに口聞かないと言われた時の三人の顔は…くくっ…」
と苦笑交じりに聞かされた時、さつきにそこまで想ってもらえている事がわかってすごく嬉しかった。

さつきの説得(?)の成果か、最終的には赤司たちもさつきと高尾の関係を表面上は祝福してくれた。

それからはお互いにバスケ強豪校の選手とマネージャーで忙しいし、たまにはケンカもするけど、仲良くやっている。
何しろ自分はさつきが大好きで、さつきも自分を好きでいてくれているのだから。

そうやって付き合いを積み重ね、今日の誕生日を迎えた。
さつきが冷蔵庫から持ってきてくれた小さなホールケーキにろうそくをさし、火をともすと電気を消す。

「吹き消す前に願い事を唱えてから一気に拭き消すと、願い事が叶うんだって。」
さつきがろうそくの明かりの中で微笑んだ。

高尾もさつきに笑みを返す。
「これからもずっとずっと、さっちゃんと一緒にいられます様に。」

そして高尾はさつきの唇にキスを落とすと、ろうそくの火を一気に吹き消す。
ろうそくの火が消えて部屋の中は外から差し込む街灯の頼りない灯りだけになるけれど、さつきは電気をつけるために立とうとしない。

「さっちゃん?」
高尾が不思議に思ってさつきの顔を覗き込むと
「私も!
私もずっと、ずっと和くんと一緒にいたいな。」
と言ってさつきは高尾に抱きついてきた。

高尾はさつきを抱きしめる。

「ありがと。
今まで生きてきて一番嬉しい誕生日プレゼントだわ、その言葉。」

高尾の言葉にさつきが顔を上げる。
二人の視線が合って、さつきが目を閉じる。
高尾はさつきの唇に自分の唇をそっと重ねた。
そのままさつきをゆっくりと床に押し倒す。
自分を見上げるさつきの顔はわずかな灯りの中でも分かるくらい、上気していた。

「最後までもらってもいい?」

「うん。
誕生日、おめでとう。
和くん、生まれてきてくれて、私と出会ってくれてありがとう。
和くんと出会えて、私、すっごく幸せ。
だから、何年たっても和くんのお誕生日を一緒に祝いたいな。」

さつきの言葉に、高尾の頬も熱を持つ。
だけど、嬉しい。

「これからもずっとそばにいてよ、さつき。
愛してる。」

触れるだけのキスをした後に、今度は深く口付ける。
さつきの腕が高尾の首に回される。

君に出会えて、オレの方が幸せだよ。
君に出会えたキセキが、神様がくれたオレの人生一番のプレゼント。

そんな事を考えながら高尾はさつきの制服のリボンタイを解いた。

END

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