黒子のバスケ

□Childhood friend 訳・夫婦
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「10分たったよ!
休憩して〜!」

さつきの声にコートにいた全員が動きを止めて、さつきの座っているベンチに戻っていく。
今日は六人の他に、黒子が火神を、緑間が高尾を連れてきているので、4ON4でストバスをしていた。

さつきは八人にタオルとスポーツドリンクを配りながら高尾に話しかけている。
「高尾くん、バックチップ全然させなくなったねー。
スクリーンの使い方もすっごく上手!」
「でしょー?」

気難しいというよりは変人な緑間の相棒を務めるくらいのコミュニケーション能力の高い高尾と同じくらい、さつきは社交性がある。

以前、紫原が氷室をつれてきたことがあったが、さつきは氷室ともあっという間に打ち解けて、まるで以前からの知り合いの様に話していた。

黄瀬が笠松をつれてきた時は、女の子が苦手だという笠松とも普通にしゃべっていた。
その後黄瀬が
「笠松先輩、桃っちと仲良くから話せてから女の子が苦手じゃなくなったらしいっス!
さすが桃っち!」
とか言ってたから、さつきの社交性の高さはかなりのものだと思う。

だけど、…だけど!
そうやって仲良く高尾と話しながらさつきはタオルとスポーツドリンクを配り終わった後、青峰の汗を拭いてあげている。
青峰の方もそれを当たり前の様に受け入れているのだ。

「これでスリーとか打てるようになったらさ、オレ、無敵じゃね?」
「高尾くんは今も充分、無敵だよ!」

なのに高尾はそれを気にしてる様子はない。
高尾はというか、キセキの誰もがそれをおかしいとは思わないらしい。

でも火神は思う。
おかしいよな?
汗なんて自分で拭けよって話じゃねぇか?
っつか、桃井さんだって拭いてやってるのは青峰だけで、他のやつらのことはスルーだし。

「聞いた?
聞いた真ちゃん、オレ、桃井ちゃんに無敵とか言われちゃったよ?」
高尾はさつきの言葉に笑いながら緑間を見る。

「ふん、桃井、あまり高尾を調子に乗らすな。」
緑間が不機嫌そうにさつきを見る。

「ミドリン、もっとちゃんと汗拭かないと風邪ひくよ?
首のとことか。」
さつきは緑間の言葉を華麗にスルーして代わりに緑間の首筋を示して見せたけど、拭いてあげようとはしない。

緑間は自分で首筋をタオルで拭き取っている。
そしてその間にさつきは青峰の首筋にタオルを滑らせている。

「さつきー」
さつきにされるがままの青峰がさつきの名前を呼んだ。

「レモンなら持ってきてあるけど、汗拭き終わってからね。」

え?
っつかなんで今ので青峰がレモンを欲しがってる事が分かるわけ?
驚く火神だが、その他のメンバーは誰も驚いていない。

「桐皇の桜井くんのお陰でさつきのはちみつレモンの腕があがったのだから、彼に感謝しないといけないな。」
赤司がさつきをからかうように笑う。
「赤司くんっ!」
さつきは咎めるように声を上げたが、赤司は笑みを浮かべたままだ。

「あのまるごとレモンがはちみつに浮いてた衝撃は忘れられないっス!
まぁでも桃っち、これで料理まで上手くなったら完璧人間になっちゃうから、料理くらいは下手なほうがいいっスよ!
それくらいが可愛いっスよ!
いや、別にどんな桃っちも可愛いっスけどね!」
そんなさつきに黄瀬が言って、青峰の汗を拭き終わったさつきが黄瀬の腕を軽く叩く。
「もー、きーちゃん!」

「でもホントにどんなさっちんも可愛いよー。
さっちん、オレにもレモン頂戴ねー。」
「うん!」

さつきは紫原には微笑みかけてから、バッグから人数分の小さいタッパーを取り出して、ピックと共に渡す。
口々にお礼をいい、みんなタッパーを開けてレモンを口にする。

そんな中、青峰だけはタッパーを受け取らない。
というか、そもそもさつきは青峰にタッパーを渡さない。
自分でタッパーを開け、ピックを刺して青峰の口元にレモンを運ぶ。
青峰は普通に口を開けてそれを入れてもらうのを待っている。
それをだれも不思議に思わない事が火神には不思議だ。
あれは普通なんだろうか?

さつきに入れてもらったレモンを食べてしまった青峰はまた口を開ける。
「大ちゃん、ちゃんと噛んでる?
食べ物をあまり噛まないですぐ飲み込むの、体によくないよ?」
「うっせーな。
噛んでるから飲み込めるんだろ?」
さつきはレモンを青峰の口元に運び、青峰はそれを食べる。

なんでこれを誰も疑問に思わねぇんだよ?!
火神は心のそこから叫びたかった。
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