黒子のバスケ

誰より愛してるから
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生徒会室の前まで来ると黄瀬は声もかけずにドアを開けた。

「桃っち!」
黄瀬は叫んでいた。
「きーちゃん…」
さつきは会長に抱きしめられていて、それから逃れようともがいているところだった。

「きーちゃん助けて!」
さつきの声に頭に血が上る。
黄瀬は大股に会長に近寄ると驚いてる会長をさつきから引き離し、突き飛ばしていた。

「オレの桃っちに何するんスか?!」
黄瀬はさつきを自分の背後に庇う。
さつきが黄瀬の背中側のセーターをぎゅっと掴んだのが分かり、怖かったんだろうと思うと頭に来る。

だけど会長も怯まなかった。

「オレのって桃井さんは恋人はいないって言ってたのけど?
君、なんなの、一体?
何がオレの桃っちだよ、君の桃井さんじゃないからね!」


その言葉が、黄瀬の理性を断ち切った。
ずっとさつきが好きだった。
さつきの気持ちが自分になくても、大事に大事にしていけば、そのうち自分を見てくれるかもしれないと思った。

だけど、さつきは未だに黒子が好きで、青峰の幼馴染で、でもさつきに好意を寄せられている黒子と、幼馴染の青峰はさつきを守ってあげるわけでもない。
その結果、さつきはこんな男に迫られて怖がっている。

黒子も青峰も自分がどんなに欲しても得られないものを持ってるのに、なんでそれを大事にしないんだろう?

黄瀬は体ごと振り返るとさつきを抱きしめた。
「桃っちはオレのっス。
他の誰のものでもない、オレだけのものっス!」
そのままさつきの唇に自分の唇を重ね、舌を差し込んだ。
抱きしめているさつきの体が強張って、すぐに黄瀬を押し返そうと小さな手が黄瀬の肩に添えられた。
だけどさつきの力で自分にかなうわけがない。
さつきの舌に自分の舌を絡める。

「っは…ぅ…」
さつきの鼻から抜ける息が妙に色っぽくて黄瀬を煽る。

バタバタと足音がして、生徒会室のドアをばたんと閉める音がして会長が出て行ったのが分かっても、黄瀬はさつきを離せなかった。

もっと深く…深くさつきの中に入り込みたい。
全部、全部欲しい。
さつきの全部が欲しい。

黄瀬は唇を離すとさつきを生徒会室の机の上に押し倒した。

「きーちゃん!!
何してるの、離して!!
助けてくれてありがと、でも離して!!」
さつきはもがきながら黄瀬に懇願する。

「そんな怖がんないで、桃っち。
優しくするから。」
黄瀬はさつきの腕を頭の上で纏め上げて片手で押さえつけた。

「きーちゃんっ!!」

「会長が言ってたじゃねっスか。
『桃井さんは恋人はいないって言ってたのけど?
君の桃井さんじゃないからね!』
って。
だったら桃っち、オレのものになればいいんス。
優しくするし、大事にするっすよ。」

黄瀬の手がさつきの制服のリボンタイを解く。
「やだ!
きーちゃんっ!」
嫌がるさつきに黄瀬は微笑みかけた。

「大丈夫っス、優しくするから。
怖くねっスよ、全然。
ずっとずっと、好きだったっス、桃っち。
だから、オレのものにして、もう誰にも触れさせない。
オレだけの桃っちになってもらうんっスよ。
愛してるっす、世界中の誰よりも。」

愛してる、世界中の誰よりも。
だから、もうオレ以外の男は誰も見なくていいっスよ。

「いっぱい気持ちよくなってもらって、オレ以外の男なんかもう要らないって、黒子っちも青峰っちも要らないって思うくらい、どろどろに感じさせて、たくさん愛するから!
大事にするね、桃っち。
誰より愛してるから。」

黄瀬が耳元で囁いた言葉にさつきは背筋がぞくっとする。

自分を見つめる黄瀬の顔はいつもみたいに明るい笑顔を浮かべていて。
なのにまるで始めて会った人のようだった。

END

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