黒子のバスケ

コ・イ・シ・テ・ル
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高校一年の冬、WCが終わった後、さつきは黒子に告白して振られた。
「桃井さんは、本当は僕のことを好きではないと思います。
あなたの好きな人は、他にいるんじゃないですか?」
黒子はさつきにそう言った。

それが青峰のことをさしているのはさつきも分かっていた。
だけどさつきにとって、青峰は肉親みたいなもので、どうしたって恋愛感情ではみることができない。

それは青峰も同じで、お互いがお互いの存在を必要としているし、離れる事も見放す事もできないけど、恋じゃない。
何度もそう言ったけど、黒子は分かってはくれなかった。
そうやって黒子に振られてしまったさつきが、次に恋をした相手が火神大我だった。

火神はさつきが黒子に振られた事を知っていて、慰めに桐皇まで来てくれた。
その時に言っていた。

「黒子も本当は分かってるんだ、あんたの気持ちが嘘じゃないって言う事は。
だけどなにかあった時、青峰を優先される事にあいつは耐え切れないんだと思う。」
と。

それを聞いた時、さつきは黒子に振られても仕方ないと思う事ができた。

「かがみんありがと。」
だから火神に笑顔で言う事ができたさつきに火神は
「オレは、オレを好きでいてくれるなら、青峰を優先されても何も言わないけど。」
とさつきの目をじっと見つめた。


それから火神を意識するようになって、最終的にあちらからの告白でさつきは高校二年の初夏から火神とお付き合いを開始した。


夏休みに入ったある日。
誠凛も桐皇も毎日のようにバスケ部の練習はあるけれど、今日はたまたまどちらも体育館の事情で練数が休みになり、丸一日会うことができる。
それでプールに行く事になっていた。

さつきはキャミワンピの上にレースのボレロを羽織るという格好で、ビニールバッグを持って鏡の前で一回転した。

黄瀬に頼んで一緒に選んでもらった服はさつきに似合ってる。
本当にきーちゃんには感謝だね、さつきはそう思いながら部屋の時計に目をやる。
今日はプールの最寄り駅で待ち合わせだから、そろそろ出る頃だ。

そう思って帽子に手を伸ばした時、家のインターフォンが鳴った。
母が出るだろう、そう思ってさつきは帽子をかぶり、自分の部屋を出た。

階段を降りて驚く。
「あ、ちょうど来たわ、さつき、火神くんが来たわよ。」
付き合い始めて割りとすぐに、火神はきちんとさつきの両親に挨拶に行ったので、火神の存在は桃井両親に受け入れられている。
その母の後ろ、玄関に火神がいたからだ。

「そろそろ家を出る頃じゃないかと思って迎えに来た。」
体の大きな火神がかすかに頬を染めてそう言う姿は可愛らしかった。


「なんで迎えに来てくれたの?」
桃井家をでて駅まで向いながらさつきは火神に聞く。
「さつき待ち合わせすると男にナンパされることが多いから、待ち合わせするより迎えに言った方が早いと思って、待ち合わせ場所と時間から逆算して、だいたい家を出る頃だろうと思った時間に迎えにきた。」
照れ隠しからか、さつきから視線をそらしてる火神にさつきは自然と笑みを浮かべていた。

黒子もそうだったけど、火神も紳士だ。
今だってガードレールがあるのに自分が車道側を歩きながら、さつきの肩に手を回し、歩道を走る自転車が横を通るたびにさつきを抱き寄せてくれる。
そんなさりげない、だけどしっかりと自分を守ってくれる火神のやさしさがさつきは大好きだ。

「大我と一日中ずっといれるなんて、嬉しい!」
さつきはぐっと肩を抱き寄せてくれた火神の腰に腕を回して火神を見上げた。
「Me too.」
頭上から降ってくる声にさつきはにっこりと笑みを浮かべた。


プールについて更衣室で着替える。
水着も今年新しく新調したものだ。
黄瀬と服を買いにいった時に水着も選んでもらった。

「桃っちは色が白いっスからね。」
そう言って黄瀬が選んだのは黒いシンプルなビキニだった。
普段着ているものより露出が多い気がしたけど
「桃っちはスタイルがすっごくいいんだから、それ活かさないでどうするんスか?!」
と言われ、つい買ってしまったものだ。

ちょっと恥ずかしいけれど…そう思いながら更衣室を出たら、先に水着に着替えて待っていた火神がさつきを見て険しい顔をした。

「これ着てろ。」
火神は手にしていた自分のものらしいパーカーをさつきに渡す。

「え?
どうして?」

「あんま肌とか…オレ以外の人の前でだすな。
Because you belong only to me .」
火神の言葉にさつきは真っ赤になって火神に抱きついた。

『オレだけの君でいて』
日本語で言わず、さらっと英語でいえてしまうところとか照れてしまう。
だけど自分以上に照れている火神を見て、さつきはふにゃりと微笑んだ。

「I Love You.」

火神を見上げてそう言ったら、火神はさっき以上に真っ赤になって、それでもさつきの手をしっかり握った。

「Me too.」

握られた手がとてもあったかい。
さつきは笑みを浮かべてその手をぎゅっと握り返した。

歩き始める火神を愛しいと思いながら見上げて微笑みながら、さつきは再確認する。
この人に私、恋してるんだなぁ。

END


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