黒子のバスケ

□お前ら早く付き合えよ
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「そんじゃ、3年はみんなお化け役です。
1・2年は頑張れ〜!」

夜になって体育館に集まったバスケ部一軍の1・2年の前で、先輩がレクの内容を発表した。
レクは肝試し、だった。
さつきの顔からさっと血の気が引く。
お化け屋敷とか、肝試しとか、さつきの苦手なものだ。

「桃井さん、顔色が悪いですよ?
どうかしましたか?」
さつきの顔色が悪くなった事に気がついた黒子がさつきの顔を覗き込む。

「さつきはお化け屋敷とかだめなんだよ。」
青峰がさつきに代わって答えてやった。

「なんだ、桃井はお化け屋敷とか肝試し苦手なのか。
でも全員参加な、これ。
はい、まず第一のペア、赤司と緑間いってらっしゃい。」
先輩はニコニコ笑ってさつきを絶望させる。

赤司と緑間は黙って懐中電灯を受け取って出発して、本当に肝試しをするのかと思うと、さつきは貧血を起こしそうになる。

「大丈夫だよ〜、どうせお化けは先輩なんだし。
いざとなったらオレが捻り潰すからー。」
紫原の言葉に少しだけ気分が浮上するが、それでもやっぱり怖いものは怖い。

5分経って、
「次、紫原と桃井ペア、いってらっしゃい!」
と先輩に言われ、紫原とさつきは歩き出す。

懐中電灯を受け取って歩き始める紫原に
「ムッくん…手、手つないでいい?」
さつきは涙声で聞く。
「いいよー。」
差し出された大きな手をさつきはぎゅっと握る。

そんな二人を見ながら、
『羨ましい!!
オレも桃井とペアになりたかった!』
と思った選手は多数いたが、それを顔には出さない人ばかりの中、青峰の機嫌は急下降していく。
青峰の隣にいる黄瀬にはそれが分かって、
(うわー、青峰っち、機嫌悪っ!
オレ、こんな青峰っちと歩くのいやっス!)
と一人、泣きそうになっていた。


紫原の手を握った上に、腕にしがみつき、顔を伏せながらさつきは歩いている。

さっきから何度も脅かされ、さつきはもうすでに何度も叫び、涙目になっていた。
しかも、お化け同士が携帯使って連絡を取り合っているのか、さつきへの脅かし方は気合が入っている。

(そんなに怖がるからみんなが面白がって脅かされるのに〜。)
と紫原は思ったが、そういったところで無駄だろというのはさつきの怯え方を見れば分かるので黙っていた。

「うらめしや〜!」
ふいにそう声が聞こえ、二人の行く手にシーツをかぶった先輩が飛び出してきた。

こんなの怖くもなんともない。
というか、むしろ怖くなさ過ぎてドン引きしてる紫原と違い、さつきは
「きゃぁぁぁぁ!」
と声を上げて紫原の腕に抱きつく。

その時、さつきの顔を何かがぬるりと撫でた。
それは紫原の腕にも当たり、紫原は
「こんにゃく、もうぬるいし。」
と文句を言ったが、さつきは紫原の腕にしがみついて震えている。
もはや声を上げる気力もないらしい。

それを面白がったシーツをかぶった先輩がさつきの顔をもう一度こんにゃくで撫でた。

その瞬間、
「いやぁぁぁ!」
さつきは今までにない大声を上げた後、へたり込んだ。
紫原の腕にしがみついていたさつきがずるっと崩れ落ちて、繋いでた手が解け
「さっちん?
大丈夫?」
さすがに紫原も心配になってさつきを覗き込む。

脅かし役の先輩は満足げに持ち場に戻っていたが、さつきはその場にへたり込んだままだ。

「さっちん?」

「ムッくんどうしよう、腰抜けちゃった。」

さつきはそう言うと、すすり泣き始めた。
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