黒子のバスケ

秀徳の一日マネージャー
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誠凛が砂浜で練習をしていたと聞いた秀徳高校の中谷監督は、自分達も砂浜で基礎練をすることにした。
そのせいで、秀徳高校のレギュラーたちは、朝から砂浜でランニングやフットワークなどをすることになっていた。

そんな中谷は、近隣の高校との練習試合を組むために、練習には今日は出ず、大坪が全てを任されている。

そんなににぎわう観光地ではないとはいえ、砂浜には海水浴客がきはじめていて、自分達を見ている。
高尾は広い視野でそれが見えていて、後でオレも海入りてーなんて思っていた。

その時、見覚えのあるピンクの髪が見えた気がして、高尾は思わず足を止めてそちらを凝視した。

「おい、高尾何やってんだよ!
轢くぞ!」
ギラギラと照りつける太陽と、太陽に焼かれた砂にイラついているのか、宮地が普段の数倍機嫌悪そうに高尾に近寄って来た。

「ちょ、それよりまじヤバいっす!
宮地さん、あれ見て下さい!
大坪さん!
真ちゃん!
あれ、ちょ、あれ止めないと!」
高尾は叫んでいた。

高尾が広い視野で捕らえていたのは、5人の男に囲まれている女の子だった。
激しく首を振って嫌がっているが、男達は腕を掴み、肩を掴み、彼女をどっかに連れて行こうとしている。
それはただのナンパ以上の目的を感じさせ、なのに周囲の人は見てみぬふりをしている。

そして5人の男に捕まっているのは、桐皇学園バスケ部マネージャーで、緑間の帝光時代のマネージャーもつとめた桃井さつきだった。

高尾に言われてそっちを見た宮地も、さすがにまずいということは理解した。

高尾の叫びに振り返った大坪がそれに気が付くより前に、緑間は走り出していた。
それに大坪、高尾、宮地も続く。

誰より先にさつきのもとにたどり着いた緑間は高尾が見たこともないような不機嫌そうな顔で男達の手を振り払い、さつきを自分の背後に庇った。

男達は最初は、背の高い緑間の登場に驚いたようだが、緑間はそんなに強そうには見えない。
そのせいか男達が怯んだのは一瞬で、すぐに緑間に食って掛かっていく。
しかし、すぐに大坪、高尾、宮地が現れ、それに気がついた木村もこちらに来たことで、男達は悪態をつきつつも退散して行った。

緑間はそれを見送って深いため息をつくと、
「お前はそんな格好で何をしているのだよ?!」
と自身の背後に庇っていたさつきを振り返った。

さつきは黒いビキニを着ていて、高校一年生とは思えないスタイルのよさが際立っていた。
だけどパーカーを羽織るとかしていないので、露出が多すぎるといえば多すぎる。

普段の緑間だったら赤面していたが、今は怒りの方が大きく、それどころじゃなかった。
あの男達の目的は絶対にただのナンパじゃなかったことが、鈍い緑間にもさすがにわかっていたからだ。

男に絡まれた怖さと、緑間の怒りの大きさのせいか、さつきは目に涙をためて緑間を見上げた。

さつきが見上げているのは緑間なのだけど、高尾はその顔をみてドキッとした。
キレイな子の泣きそうな顔って…こうなんかグッとくるものがあるんですけど…。
それは大坪も宮地も木村も同じことも思った。

「青峰くんがね…」
さつきはそう言って目元を指先で拭う。

怖かったんだろう、高尾は改めてそう思った。
泣くほど怖かったんだろう。

なのに緑間は険しい顔で
「お前がそんな格好でうろついていることと、青峰と何の関係があるのだよ?!」
怒りを露にしたままだ。

「だって…荷物全部もって青峰くんがどっかに行っちゃったんだもん…」
堪えきれなくなったさつきが泣きながら言った言葉に全員が唖然とした。

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