黒子のバスケ

あなたの手
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「「「本当に申し訳ありませんでした。」」」
赤司、緑間、さつきは職員室で深く頭を下げた。

「灰崎がバスケ部の勝利に貢献してると赤司と緑間と桃井が言うのならそうだろう。
だけど、かばうにも限界がある。
それを肝に銘じて置くように。」
教頭先生の言葉に赤司と緑間とさつきは再び深く頭を下げた。


昨日、灰崎が校内でまた暴力事件を起こした。
バスケ部の3軍の先輩二人を殴りつけたのだ。

それでも灰崎の実力は高くて、バスケ部には必要だ。
それで赤司と緑間は殴られた先輩に謝罪し、だけどこのことは公にしたら困るのは先輩達ですよねと半ば脅し、了承を得た上で、さつきに灰崎の暴力事件のことを話した。

そして顧問と教頭に報告し、なかったことにして欲しいと赤司と緑間とさつきの三人で職員室に頼みにきた。

でも、庇うのも限界がある。
それは赤司も緑間も分かっている。

「もうそろそろ灰崎のことは庇いきれなくなってきたのだよ。
オレの印象だと、次はもうないと思う。」
緑間がメガネを上げてため息をついた。

「そうだな、もうそろそろ限界だ。」
赤司も緑間に賛同する。

「でもショウゴくんは…私のためにあの先輩達を殴ったんでしょ?」

さつきの言葉に赤司と緑間は顔を見合わせた。
知っていたのか……二人の顔にはそう書いてあった。


桃井さつき…一年から一軍のマネージャーになったのは、帝光の歴史の中でも彼女一人だ。
自分達と同じように、彼女もまた特別な存在だ。

だけど、その能力以上にどうしたって男子部員たちの目を引くのは、さつきの容姿と性格で。
よからぬことを企てる部員がいることは、赤司も緑間も…というか、レギュラーメンバーは分かっている。
さつきをそうならないように守るのも自分達の役目だと赤司も緑間も分かっている。
さつきを失うわけには行かない。
彼女は帝光バスケ部になくてはならない存在だからだ。

そして、個人的にも守りたいと思う、大切な存在だからだ。
それは、レギュラーメンバーみんな同じだが、特にその想いが強いのは灰崎祥吾だ。
さつきと灰崎は付き合っているのだから、それは仕方のないことだろう。


もともとは人のものは欲しがる灰崎が、青峰の幼馴染のさつきを欲しがったのが発端だったけど、さつきの純粋さに灰崎は本気で惹かれていったようで、さつきに自分を選んで欲しくて、灰崎は随分と変わった。

そんな灰崎を見ていてさつきも灰崎の気持ちを信じたらしく、二人は付き合い始めた。

すっかり落ち着いた灰崎を見て、さつきを取られて悔しいと思うと共に、ほっとしたのも、レギュラーメンバーの本音だった。

だけどさつきと付き合い始めてから、灰崎はさつきのことを大事にするあまり、さつきに対して邪な気持ちを抱えてる輩に問答無用で暴力を振るうようになった。

せっかく落ち着いたのに…そうは思いつつ、灰崎の力が帝光に貢献してきたことは事実なので、赤司と緑間はさつきを伴って職員室に謝罪に行っている。


「前にあの先輩達に呼び出されたことがあるの。
放課後、旧校舎の方の音楽準備津室に来て欲しいって。
なにかあったらいやだなと思ったから、青峰くんに一緒に行ってもらったんだけど、ガムテープとか用意してあったから私と何かの話をしたかったわけじゃないと思う。」

さつきの言葉に赤司と緑間は驚いて目を見開いたあと、
「なんでその時に言わなかった?!」
と怒る。

「だって3軍とはいえ先輩だし、そんなの知ったらまたショウゴくんが暴れると思って…。
結局、先輩達のこと殴っちゃったけど…。
ショウゴくんが暴力事件を起こすのは、前は自分が気に入らないからだったけど、今は私のせいなんだよね…。」
さつきは俯いてそう言った。

「桃井のせいじゃないのだよ。
人を守るのに暴力に訴えるというのは野蛮だ。
他に方法はあるはずなのだから。」

緑間の言葉に赤司も頷くが、さつきの顔は暗い。

「……灰崎と別れる、そういう選択肢はないのか?
灰崎は帝光バスケ部に必要な存在だが、いかんせん素行が悪すぎる。
今のままでは、バスケ部全体に悪い影響が出かねない。」

しばらくは黙っていた赤司が、意を決したようにさつきに尋ねた。
さつきが弾かれたように顔を上げる。

「それはいや。
だったら、私がバスケ部やめるよ。
それなら…」

「桃井がバスケ部をやめた所で何の根本的な解決にもならないのだよ。
桃井がバスケ部をやめた所で、灰崎は桃井のことを守るためなら、バスケ部に桃井がないくてもどんなこともするだろうかならな。」
さつきの言葉を緑間が慌てて否定する。

「そうだ、灰崎が暴力を振るったのはバスケ部員だけじゃない。
桃井がバスケ部をやめることはなんの解決にもならない。」

そういいながら赤司も緑間も内心で頭を抱えた。
さつきにバスケ部をやめられるのは困るし、だけど灰崎がこのままなのも困る。

「とにかく、まだ部活もある。
体育館に戻ろう。」

赤司の言葉に頷いて、三人は体育館に向った。

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