黒子のバスケ
□溢れるほどの幸せをVer.黒子
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高校三年生の11月。
もうすでにかつての絆を取り戻していたキセキの世代は、祝日と土日が重なっての三連休を利用して、赤司と紫原がこっちに帰ってきたということで、いつものストバスコートに集まって3ON3をしていた。
さつきはそれをベンチで見ていた。
みんなが絆を取り戻してから、こうして自分も一緒に呼んでくれて集まるのはすごく嬉しい。
もうすでに六人がみんな同じ大学に入ることも決まってる。
これから、みんなはますます絆を深めていくだろうと思う。
だけどさつきは自分の将来を決めあぐねている。
青峰からは何度も
「オレらと同じ大学にくんだろ?
そんでマネージャーやるんだろ?」
と言われているし、黄瀬も黒子も同じことを言ってる。
緑間も遠まわしにそんなことを言ってくるし、紫原からはストレートに
「さっちん、また一緒にバスケしようねー。」
とメールが来る。
赤司からも、進路はどうするのか、何で進路を決めあぐねているのか、何か悩みがあるのかといったメールが来ていて、今日のこの集まりも、ストバスをしつつ、実はさつきの進路について、みんながさつきを説得しようとしているのだと、さつきは何となく分かっていた。
さつきが悩んでいる本当は理由は、『彼』から
「君が大学に行きたいというのならそれがベストです。
ですが、僕もいい年ですので、僕との結婚も視野に入れて将来を考えてくれませんか?」
と言われているからだ。
彼のことは好きだけど、結婚なんてまだ高校生のさつきには遠いことで、それが急に身近になって戸惑っているのだ。
そんなことを考えていたら、スマホのアラームがなる。
10分がたったから、少し休憩してもらわないと。
「時間だよー!」
そう言いながら立ち上がったさつきは、自分の視界が揺れたことに気がつく。
遠くで自分の名前を慌てたように呼ぶ六人の声が聞こえた気がしたけど、それが現実かどうか分からないまま、さつきの意識は闇に沈んでいった。