黒子のバスケ

アテナの恋人
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パチッと将棋の駒を将棋盤に置く音がバスケ部の部室に響いた。
その音とともにバスケ部副主将・緑間真太郎が言った言葉に赤司は軽く目を見開く。

「赤司、アテナを知っているか?」


アテナ…ギリシャ神話における知恵と戦争の女神だ。
同じ戦争を司るアレスの様にただ戦いを好み、時に負けるなんていうことはなく、正義のために知略で勝利をもたらす女神だ。
そして、美しい神様でもある。
美と愛と恋の女神アフロディーテと、全知全能の神ゼウスの正妻で結婚と母性を司る女神の中の最高位にあるヘラと美しさを競ったこともあるほどなのに、処女神。
それがアテナ…だ。

「知っている。
オリンポス十二神の一人だな。
知恵と戦いを司る女神だが、思慮深く、オリーブを人間に与えたとされているな。
学者、裁判官、軍人なんかは彼女を信仰し、祈りを捧げたと言われる。」
パチッと駒を将棋盤におきながら赤司は答えた。

「そうだ。
そして、美貌の女神でありながら、処女神だ。」
緑間がこまを将棋盤に置く。

「そうだな。」

「まるで桃井のようだと思わないか?」

赤司は将棋盤に駒を置こうとした手を止め、緑間を見た。
緑間も赤司をじっと見ている。

「真太郎…」

「桃井は知恵と戦略でオレ達に勝利をもたらす。
それに、美しくて、気高い。」

「真太郎が女子の美醜に言及するとは思わなかったよ。
そんなものには興味がないかと思っていた。」
肩をすくめて見せた赤司を、緑間は険しい顔で睨む。


「嘘をつくな。
オレが桃井を好きな事、分かっているくせに。」

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