黒子のバスケ
□AMARIGE
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「オレ、アメリカに渡米すんだよ。」
さつきの部屋を訪ねてきた幼馴染はさつきのベッドに座ってそう言った。
「うん、知ってるよ。」
さつきもそう答える。
大学卒業後、プロチームに入った青峰は二年そこでプレーをした後、NBAに挑戦することにした。
もうすでにあるチームと契約し、後はアメリカに行くだけになっている。
そして大学卒業後、青峰の所属するチームのスポーツトレーナーになったさつきは、青峰と一緒にアメリカに行く。
一緒に行くんだから、青峰の渡米のことは知っているに決まっている。
何を馬鹿なことを言ってるんだろう、さつきは荷物をまとめながらそう思った。
チームにわがままを押し通し、自分をアメリカに連れて行くと言い張ったのは誰だというのだろう?
呆れてため息を付いた時だった。
「だからその前に結婚しようぜ。」
青峰の言葉にさつきは思わず青峰を振り返っていた。
青峰はまっすぐにさつきを見つめていた。
「なに…」
「お前がオレを好きかどうかなんて興味ねーし。
お前がオレを必要としてるかどうかも関係ねー。
オレがお前を好きで、オレがお前を必要としてる。
オレがお前と一緒に生きていきたいと思ってる。
結婚の理由なんざ、それで充分だろ?」
こんな自己中で自分勝手なプロポーズをする男がこの世にいるなんて信じられない!
さつきはそう思った。
なのに、その言葉が妙にすとんと心に落ちてきたのもまた事実。
きっと自分も、もう、青峰以外の男と付き合うなんてできないと思う。
だって、黒子を好きだったり、大学では他の男の子と付き合ったりもしたけど、それでも結局青峰のそばを離れるという選択はしなかった。
これからも、青峰と離れることはない。
だから、きちんとした形でそれを示すのも、いいかもしれない。
「うん。
大ちゃんがそうしたいならそれでいいよ。」
さつきは青峰に笑いかけた。
「は?」
今度は青峰が驚く番だった。
まさかこんな簡単に了承をもらえると思わなかったのだ。
「は?
結婚、していいよって言ったの。」
さつきは青峰の呆けた顔を見て笑ってる。
「だって、大ちゃん、私がいなかったらきっと結婚できないよね。
デリカシーないし、オレ様だし、自分勝手だし、暴君だし。
私くらいしか、そんな大ちゃんに付き合えないでしょ?」
「バーカ、黙れブス!」
青峰は笑ってるさつきをにらみつけたけど、さつきは動じない。
「ね、そんなこと言われても笑って許してくれるのなんて、私だけなんだから。」
その笑顔に青峰は思い出す。
『青峰さん、桃井さんは相当寛大な女性ですよ。
青峰さんみたいな男性、普通の女性じゃ付き合いきれなくてすぐに愛想を付かされます。
多分、桃井さんが他の人と結婚した時点で、青峰さんは一生独身が確定するものと思われます。
だから早いとこ、桃井さんに告白しちゃった方がいいですよ。
桃井さん、もてるんですから。
ボクだって高校の頃は桃井さんに憧れてたし。』
アメリカに行くことが決まった時、桐皇のかつてのチームメイトたちが飲み会を開いてくれた。
そこで桜井に言われた。
桜井の言葉に青峰はさつきに視線を移した。
今吉や諏佐、若松と話をしているさつきは、いつもより着飾っているせいかとても綺麗に見えた。
「誰かの隣で笑ってる桃井さんなんて見たくないでしょう?」
確かにそうだ。
誰か違う男の横で笑ってるさつきなんか、見たくねぇ。
そして、あんなプロポーズして、挙句にブスなんていっても笑ってる女、こいつ以外に知らねぇ。
「マジむかつく、このブス!
だけど、目一杯幸せにしてやるよ!」
青峰は立ち上がるとさつきのところまで来てさつきを抱きしめた。
「うん。
私も大ちゃんをたくさん幸せにするね。」
「お前、やっぱりバカだな。
何もしなくても、お前はオレを幸せにしてくれてんだよ。
お前がいるだけで、オレは幸せなんだよ。」
青峰はさつきの唇にキスをした。
始めてのキスだけど、これからはもうこの人以外の人と、キスすることなんてないだろう。
お互いがそう確信していた。