黒子のバスケ

愛妻家達の幸福
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さつきは足早に歩いていた。


大学から帰った後、もうすでに外は暗いのに母親から
「ごめんね、さつき。
ケチャップがないからすぐそこのコンビニで買ってきてくれない?」
とおつかいを頼まれた。

大学でもバスケのサークルでマネージャーをしているから疲れたし、もう外は暗いし、行きたくないと思ったけど
「何か一つ、好きなもの買ってきていいから!」
と言われ、それなら季節限定ででてるいつものアイスのさくらんぼ味を買おうと思ったらうれしくなって、さつきは買い物に行くために家を出た。

だけど家を出てコンビニへの道を歩いていたら、誰かが自分をつけて来ている気配に気がついたのだ。
さつきの家があるのは昔からある住宅街で、時間帯によってはまったく人が通らなかったりする。
今がまさにそうで、人通りはまったくない。
だからさつきは急いでコンビニ行き、コンビニから家か、青峰にでも連絡して迎えに来てもらおうと思っていた。

だけど、青峰は大学が違う。
帰って来てるかな、大ちゃん。
そう思うと不安になる。


キセキの世代は黒子のお陰で再び絆を取り戻し、高校生の頃から何かにつけてさつきも含めた七人で集まるようになっていた。
当然、大学は六人とも、同じ大学に行くことになった。

だけどさつきは六人と同じ大学は選ばなかった。
今も六人が自分を仲間と思ってくれるのは嬉しかったけど、今の六人には自分のサポートは必要ない、さつきはそう思ったのだ。
だけどスポーツには携わりたい。
それで、実家がスポーツジムを経営するリコに相談し、スポーツに関する勉強が詳しく出来る大学を選んだ。
それは、六人と同じ大学ではなかった。

「違う大学に行ったって会えなくなるわけじゃないよ?」
さつきはそう言って笑ったけど、六人は納得していないようだった。

そして確かに会えなくなるわけじゃないけど、今までのように会えるわけじゃない、それに気がついたのは大学に入学してからだったけど。
入学後も何度も赤司からの連絡があったけど、一度もみんなに会いに行けてない。
青峰とは家が隣なのに、最後に顔を合わせたのは二週間くらい前だ。

でも、もし大ちゃんがいなくても、お母さんに迎えに来てもらえばいいよね、さつきはそう思いなおし、歩く速度をさらに上げる。
もう少し、もう少しだけ…コンビニにさえ付けば大丈夫なんだから。

必死で歩くさつきは後ろから誰かが走ってくる足音がするのに気がつき、反射的に自分も走り出していた。
だけど、すぐに後ろからかけてきた『誰か』に捕まり、さつきは口元に何かを当てられて、あっという間に意識は暗闇に飲み込まれていった。

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