黒子のバスケ

桐皇の女神
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今吉は、手に持ってた参考書を掲げて
「桃井〜、前に欲しいって言うとった参考書があったから持ってきたでー!」
と声をかけた。

以前、さつきが今吉にふっと
「参考書が欲しいんですよね…。
問題を解きながら学ぶテキスト形式じゃなくて、高校一年生の数学の、基礎が丁寧に説明してあるような参考書。」
と言ったことがあった。

それを今吉はちゃんと覚えていて、昨日、寮の自室の本棚を整理していた時に以前、自分が使っていた参考書がでてきたので持ってきたのだ。


「主将!
ありがとうございます!
大ちゃん、後は一人でやってて!」

さつきは青峰にそう告げて、今吉の方に走ってきた。

「そんなにいそがんでもワシは逃げんよ。」

今吉は笑いながらちらっと青峰を見る。
青峰は憮然とした表情で今吉を見てから、一人でストレッチを始めた。

その間にさつきは今吉の元に来ていた。
「これでええの?」
今吉はやっぱ桃井は可愛えなぁと思いながら、さつきに参考書を渡した。

さつきが
「見せてもらっていいですか?」
と今吉から参考書を受け取り、ぱらぱらと捲る。
「そうです、こういうのが欲しかったんです!
えーと○○出版の…」
参考書の出版社を確認してるさつきに
「あ、それ桃井にあげるさかい。」
と笑ったら、さつきは目を見開いた後、ふんわりと微笑んだ。

「頂いてもいいんですか?」
「ええよ。」

そんな可愛ええ笑顔がみれただけで、その参考書は、それ以上の価値があるで。
ひそかに思う今吉に
「本当にありがとうございます、主将!」
さつきは嬉しそうに微笑んだ。

今吉もつられて笑みが深くなる。
さつきは今吉に向ってぺこっとお辞儀をした。

そして、次の瞬間、叫んだ。
「大ちゃん、主将がくれた参考書だよ!
これ見て、ちゃんと勉強してよ!」

今吉は一瞬、さつきが何を言ってるか分からなかったが、
「あ?!
今吉サン、どーも」
全然感謝してなさそうに青峰が今吉に向って言ったので、さつきが欲しがった参考書は自身のものではなく、青峰のためだったのが分かって肩を落とした。

青峰のためのものやった分かってたら、上げへんかったのに…!

今吉は、全然ありがたく思ってないっぽい…というか、明らかに今吉の落胆に気がついていそうな青峰の顔を睨みつけることしかできなかった。

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