黒子のバスケ
□うんざりするほど、愛してる
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「まぁさ、そんなに落ち込むなよ。
多分、あの子、疎くて鈍感なんだと思うよ。
青峰が幼馴染だったんだろ?
なんか青峰って番犬って感じするじゃん。
青峰がずっと彼女に男を近づけてこなかったからあんな疎くて鈍感になっちゃったんだよ。」
高尾の言葉に緑間はため息をつく。
「知っている。
だから桃井は男との距離を取り方を知らないのだよ。
そして自分のことも理解していない。
自分を好きになる人なんていない、ミドリンは変わり者だよねなどと言えてしまうのだからな!」
慰めるつもりで言ったのに思った以上に疎かった桃井さつきに高尾は
「へぇ…」
としか言えなかった。
あんだけ美少女でスタイルもいいのに、それを分かってないとか天然通り越してややバカなのか…もしくは周りが相当過保護だったんだろうなと思う。
その時だった。
「あっ、緑間くん!」
「本当だ!
緑間くんだ!」
「やだぁ、緑間くん、浴衣姿もかっこいい!!」
と声をかけられて、緑間と高尾は振り返る。
そこには緑間と高尾のクラスメートがいた。
日ごろから緑間のファンを公言してる女子の三人組だ。
緑間は相手にしていないが、彼女達の辞書に諦めという文字はない。
いつもいつも、無視されても一方的に緑間に話しかけてくる。
これ以上、真ちゃんを不機嫌にするなと思った高尾は目を丸くした。
「こんなところで何をしてるのだよ?」
緑間が彼女達に話しかけたからだ。
高尾は緑間が彼女達に話しかけたところを始めて見た。
「お祭りに来たの。」
「そうなの、夏といえばお祭りでしょ?」
「っつか、緑間くんでもお祭りに来るんだね。」
「オレだって祭りくらい来るのだよ。」
「ねぇ、なら一緒に回ろうよ!」
「そうしようよ、ね?
一緒なら楽しいよ!
ね、高尾くんもいいでしょ?」
「いや…」
よくないでしょ…と高尾が言おうとした時、緑間がふっと一人の女子の髪に挿してあるかんざしに目を止めた。
緑間の手が彼女の髪に伸びる。
「そのかんざしはどこで買ったのだよ?」
女の子のかんざしは玉かんざしだったが、玉がさくらんぼの形になっていて可愛かった。
緑間の手がその子の髪に触れる。
女子達は歓声を上げて、
「教えてあげる!
なんだったら一緒に行かない?!」
と騒ぎ出し、緑間の手をぎゅっと握った。
「いや、店を教えてくれればいい。」
「そんなこと言わないでよー。
まだお店やってるから今から一緒に行こうよ!」
もう一人の子が緑間のもう片方の手を握り、もう一人が緑間の背後に回りこみ緑間の背中を押す。
その時、高尾の広い視野のすみに、濃紺の浴衣を着た桃色の髪と、濃地の絣の浴衣姿の水色の髪が見えた。
その後ろには青と黄色の髪も見えている。
四人は呆然と緑間を見ていた。
「真ちゃん!」
高尾は慌てて緑間を呼んだ。
さつきだって男の子三人と行動を共にしてるわけだけど、スキンシップはしていない。
しかし、今の緑間は女子三人に手を引かれ、背中を押され、どう見ても女の子にちやほやされているようにしか見えない。
「なんだ、高尾…」
言いかけた緑間も、さつきと黒子と青峰と黄瀬に気がついたのか目を見開く。
さつきの手から持ってたスーパーボールの詰まったビニール袋が落ちる。
そのままさつきは下駄を履いてるとは思えない速さで、走り去ってしまった。
「さつき!」
「桃っち!
危ないっすよ、一人になっちゃダメっス!!」
青峰と黄瀬が慌ててさつきの後を追っていく。
「ちょ…離せ!!」
緑間も慌てて女子達の手を振りほどくと、さつきを追った。
高尾はそれを呆然と見ているしか出来なかった。