黒子のバスケ

アイスクリーム・シンドローム
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食べていたアイスの棒に『あ』の文字が見えてきて、黄瀬は内心でよっしゃー!と叫んでいた。

いつも部活の後でコンビニに寄って何かを買っては食べている自分達を、マネージャーの桃井さつきは羨ましそうに見ていた。

さつきは青峰の幼馴染で家も近いらしく、いつも一緒に帰っている。
だから青峰と一緒に自分達についてくるが、青峰の様に買い食いをするわけでもなく、買い食いをしている自分達を少し遠くから見ている。

黄瀬はさつきのことが好きだから、少し寂しそうにしてるさつきを見たくなかった。

とはいえ、さつきは本人が気が付いていないだけでバスケ部のマドンナ。
あの赤司でさえ、さつきには甘い。
新参者といっても差し支えない自分が話しかけるなど、周りが黙っていないはず。

だから、自然な形でさつきに話しかける手段として、黄瀬は毎日同じ当たりくじつきアイスを食べている。
このアイスが当たったら
『あたりがでたけどオレはもうアイス食べたし、いらないっスから上げるっス!』
と言ってさつきに当たりを上げる。
これでさりげなく、かつ回りに文句も言われないようにさつきに話しかけられる。

ずっと前から練っていた計画だ。
だけどこの計画には『あたりが出なければいけない』という、自力ではどうにもできない運に頼るしかない部分があることが欠点で、黄瀬はもう何日同じアイスを食べ続けているか分からないくらいだった。

だけど、それも今日で終わりだ。
やっとあたりがでた。

黄瀬は頭が痛くなるのは分かっていても、アイスを一生懸命に口に運ぶ。
早く、早く食べなきゃ。

そうして、やっと食べ終わったアイスのあたり棒を持って、さつきの所に行こうとした時、自分の教育係だった黒子が自分より一足先にさつきに近寄っていくが黄瀬の視界に飛び込んできた。

なんだろう、黄瀬は黒子を目で追う。
黒子はさつきに何かを渡した。
今、黄瀬が持ってるのと同じもの…アイスの棒に見える。

「僕もういらないんでこれあげます。」
黒子の声が黄瀬の耳にいやにはっきり聞こえる。

黒子はさつきにアイスの棒を渡すと、さっさとさつきから離れる。
そんな黒子の背中を見送るさつきの目にさっきまではなかった熱っぽさが宿っているのを、黄瀬は呆然と見ていた。


さつきと黒子が付き合い始めたのは、高二になってすぐだった。
意外なことに、黒子からの告白だったそうだ。

「やっと自分に自信が持てたので、さつきさんに告白することにしたんです。」
キセキの世代を倒し、自分のバスケを認めさせたことで、黒子はやっと自分に自信が持てたのだそうだ。
それで、ずっと好きだったさつきに告白したんだそうだ。

アイスの棒をもらってからずっと黒子を意識してたさつきは速攻でOKしたと聞いている。

さつきの片想いならまだチャンスがあるかもしれない、とさつきを諦め切れなかった黄瀬だけど、二人が付き合い始めて自分の失恋が確定した事を知った。

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