銀魂

□好きだよ、ずっと好きでした
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土方が九兵衛から
「好きだ。
僕は、君が好きだ。」
と告白されたのは、2月14日、バレンタインデー当日だった。
チョコレートの代わりにリボンをかけられたマヨネーズを持ってきて、九兵衛は無表情なまま、まっすぐに土方の顔を見てそう言った。

ミツバの事があって、土方は自分には女を幸せにすることはできないんだと、嫌というほど思い知った。
自分みたいな修羅になって生きていかなければいけない男でなく、どっかで普通の野郎と所帯持って、普通にガキ産んで、普通に生きてってほしい、ただそれだけだったけど、その結果、ミツバは普通の幸せを手に入れられたかと言ったら、それは違ったと思う。

結婚しようとしてた男は悪人だった。
それでも彼女は、自身を不幸だなんて思わずにいたと思う。
そういう、優しくて、でも心が強い女だったから。
だから惚れたんだ。

けど、自分にはもう、女を好きになる資格はないと土方は思っている。

九兵衛の告白に心が動かなかったと言えば嘘になる。
男として育てられた、自分をボコボコにするほど強い女が
『強くて優しい女の子になりたかった。』
と泣いてる姿を見た時、これからは強くて優しい女の子として生きていけるといい、と土方は祈ったのだから。

だけど、やっぱり、自分には……

土方が告白を断ろうとしたその時、無表情だった九兵衛は初めて笑った。
「君と、沖田くんの姉上の事は存じ上げている。
好きな女性の幸せを願い、身を引くことを選んだ君はとても愛情深くて優しくて素敵だなと僕は思う。
だから、僕は君の一番になろうなんて思っていない。
なれるわけがないからな。
なので、とりあえず三ヶ月、お試しで僕と恋人になってみないか?
三ヶ月後には、僕は君の手をちゃんと離すから。」

妙の前では笑う事もあったのかもしれないが、少なくとも土方は九兵衛の笑顔というのを初めて見た。
その笑顔に毒気を抜かれ、土方は分かったと返事をしてしまった。
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