銀魂

□恋人は人気タレント7
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そして、今日の撮影は、第三話に当たる話を撮る事になっていて、九兵衛は衣装のタイトスカートのスーツ姿で撮影準備ができるのを座って待っていた。

その隣にいる制服姿の総悟が九兵衛に
「交番勤務の巡査が、こんなに所轄署で事件に首突っ込むもんなんですかねィ?」
と話し掛けている。

「それ言っちゃったら、ドラマが成り立たないだろう?」
九兵衛はおかしそうにくすくす笑いながら総悟に返事をする。

「そうなんですけどねィ。
そういや、きみありてこその衣装の十二単、重くなかったんですかィ?」
他の共演者が九兵衛に近づこうとしているのが分かったのか、総悟が二人にしか分からない話を話し出した。

「十二単、重かったよ。」
九兵衛はそう答えた。

所作の指導の際、九兵衛は十二単を着ている。
それを着て、歩く練習をしたのだ。
総悟の方も束帯を着て歩く練習していたけど。
神威もそうだ。
九兵衛との婚礼シーンで束帯着るからな。

「でも、沖田くんが着た束帯も重かったんじゃないか?」
「沖田くんなんて他人行儀な呼び方やめなせェ。
重かったけど、十二単ほどじゃねェですぜィ。」

二人の会話を聞いていた、九兵衛に近づこうとしていた共演者が近づくのをやめたのを俺は横目で確認した。

今回の撮影、総悟のおかげで、九兵衛に変な野郎が近づくことはないが、総悟自体が俺に取っては悪い虫なんだよな。
しかし俺の隣にいる近藤さんは
「あの二人、仲が良さそうでよかったよな!
これで視聴率もいいといいよな!」
とか言ってる。

「今クールのドラマの中で、注目度は一番だから、そこそこ視聴率はとれるんじゃねーか。」
俺は不機嫌さを隠し、そう告げていた。

総悟の制服姿は様になっているし、九兵衛のスーツや喪服姿は今までの役にない色気がある。
二人と坂本が衣装でワイドショーに番宣で出た時、SNSは沸いてたし。

その時、
「九ちゃん!」
でかい声で九兵衛を呼ぶ声が聞こえ、全員がそっちの方を見た。
次のクールで夫婦役をやることになる、神威が学ラン姿で立っていた。

「神威さん、おはようございます。」
嫌そうな顔を隠そうともしない総悟と、椅子から立ち上がって神威に挨拶をする九兵衛。

「俺、隣のスタジオで撮影中なんだよね。
赤バッジ!が撮影してるって聞いたから、休憩中に顔出しにきたよ。」
なんて笑ってる神威に九兵衛が
「ああ、夜兎工業高校家庭科部、でしたっけ?」
と聞く。
ヤンキーしかいない工業高校で、新入生の神威がケンカで学校のボスになるけど、ボスになった神威の目的は、家庭科部を学校に作り、スイーツ選手権高校生の部で優勝することだった、そのためにヤンキーどものトップになって、ヤンキーと共にお菓子作りを始めるという、不可思議な深夜ドラマだ。
不可思議だと思ったけど、番組予告見る限りではおもしろそうなんだよな。

「そうそう!
最初はなにこのドラマと思ったけど、撮影してても面白いんだよね!
九ちゃんの赤バッジ!も番組予告見てる限り、面白そうだけど、今回はアクションシーンあんの?」
神威の質問に、
「これからの撮影ではありますよ。
犯人と格闘するシーンとか、逮捕の時に抵抗されて押さえ込むシーンとか。」
と九兵衛が答える。

いきなり現れた神威に九兵衛を取られたように感じたのだろう、総悟の方はふてくされて
「そろそろスタジオ戻った方がいいんじゃないですかィ?」
と神威に言っている。
が、気持ちは分かる。

きみありてこその顔合わせの時、
「和宮役、柳生九兵衛です。
よろしくお願いします。」
と九兵衛が立ち上がって挨拶したら
「前からずっと思ってたんだけど、柳生さんって強い子を産みそうだよね。
特撮の撮影も、スタントなしで全部こなしたんだろう?
あの撮影、うちのアクションクラブの人がアクション監督務めたけど、身体能力がずば抜けて高かった、あの子は片目しか見えないのにすごい子だって言ってたよ。
俺の子供を産んでくれない?」
と家茂役の神威が言って、その場にいた全員が唖然とした。

神威のマネージャーの阿伏兎というおっさんが慌てて神威をひっぱたき、
「すみません、こいつ、アクションのことばっかり考えているうちに、ちょっと方向性が変な方にいってしまいまして。
強い人と共演したい、女性は強い子を産むかもしれないし、子供はこれから強くなるかもしれないよねってよく言うんです。
子供産んでくれって本気じゃないんで、気にしないでください。
本当に申し訳ないです。」
と謝っていた。

が、高杉があとでプロデューサーになんであんな変なやつをキャスティングしたんだと文句言っていた。
あいつの出演シーン削ると言って、プロデューサーがそれはしないで欲しいと必死で頼んでたくらいだからな。

総悟も
「なんでィ、あいつ!
やべェやつじゃねェですか!」
とか言ってた。

が、俺も心からそう思う。
あとで俺と近藤さんからそれを聞いた社長も
「億が一にも、間違いが起こらないようにしろ!」
と怒っていたし。

「九兵衛さん、そろそろ撮影始まるんで、メイク直してもらって下さい。」
俺はそう言って九兵衛に近寄っていく。
近藤さんも
「座ってたから、しわになってないかスタイリストさんに、衣装のチェックしてもらったら?
スタイリストさーん!」
なんてスタイリストを呼んでいた。

神威はその俺達の行動に笑みを深くしたけれど、
「それじゃ、九ちゃんまたね!」
と九兵衛に手を振ってスタジオを出て行く。

「そんなにあからさまに警戒しなくても、あちらのマネージャーさんも本気じゃないと言ってただろう?」
神威が出て行ってから俺と近藤さんに九兵衛が言うが、近藤さんが
「用心にこしたことはないんだよ。
なにかあったら、社長に怒られるの、俺達だからね?!」
と九兵衛に言って、九兵衛は
「ああ、うん、ごめん……」
とその勢いに謝っていた。
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