銀魂

□致死量ぎりぎりで与えられる毒のような愛
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そんな九兵衛は、今日も、見合いを終えた後だった。

お断りの言葉をかけるために会うとはいえ、きちんとした料亭で行われるそれに適当な格好でいけるはずもなく、職人の一点ものの江戸紫の地に手鞠柄の振袖姿の九兵衛は、料亭の前でタクシーを待っていた。
無事にお断りの言葉を相手に理解してもらったので、家に帰るところだ。

その時、携帯がなって、メッセージアプリがメッセージを受信したことに気がつき、九兵衛はため息をついた。

「時間があいたらすぐに屯所の俺の部屋に来い。」

恋人である土方十四郎からのメッセージだった。
今日の見合いがばれたんだろう。

九兵衛はもう一度ため息をついた。

その時、見えてきたタクシーに手を上げて合図する。
帰ろうと思っていたけれど、すぐに来いと言ってるし、怒っているのだろうから、放っておく訳にいかない。
「真選組屯所まで。」
乗り込んで運転手にそう告げ、九兵衛は目を閉じた。

土方に黙っての見合いは、片手で足りるほどしかしていない。
しかし、そのうち一回は土方にばれてしまい、ものすごい責められた。

「言ったって怒られるんだから、言わない方がいいと思うだろう。
断るために会ってるんだから、そんなに文句言われなきゃならない意味が分からない。」
と正直に言ったら、さらに怒らせてしまったけど。

「断るためにめかし込んで男に会いに行くのを、俺が不愉快に思うとは考えないのか!」
とか言われたけど、きちんとした料亭にはそれに合った格好を求められるものだし、柳生家の娘が普段着で料亭になんて入っていったら、柳生家は金に困ってるのかとか噂されてしまうと説明したけれど、
「柳生家の体面だのなんだののことを言ってんじゃねーんだよ、俺がやだって言ってることをやるのがおかしいって話してんだよ!」
と言われた。

それで言ったら、本人にはいえないけど、九兵衛は三日もあけずに会いたいとは思わないし、自分の時間も大事にしたい。

土方が忙しい中、時間に都合を付けていると思うから土方に合わせているけど、そのために何度妙や神楽、月詠やあやめとの約束をキャンセルしたか、分からない。

銀時や新八も来るからという理由で、飲み会をキャンセルした事だって何度もある。
それを悲しくは思うけど、九兵衛は文句なんか言った事ないのに……理不尽だと思う。
そう思ったら、だんだん腹が立ってきた。
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