銀魂

□彼と彼女は互いを愛しすぎている
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柳生家に真選組と銀時と新八が乗り込んできた以降、その時のメンバーとは街で会えば、立ち話をする位には近しい関係になっていたけれど、やはりふとした拍子にふれあうと、投げ飛ばしてしまっていた。

しかし、総悟のことだけは、九兵衛はふれあう事があっても投げ飛ばさなかった。
「なんで、あんたは俺を投げ飛ばさないんですかねェ。」
と総悟に言われた時、九兵衛は
「なんでだろう、君は女の子みたいな顔をしてるから、男のくくりに入っていないのかな。」
と答えてしまった。

これは、ドSの総悟のプライドを傷つけた。
初対面の女性でさえ、超短時間で調教してしまう自分を九兵衛は『男のくくりに入っていない』と言ったのだ。
なんとしても自分に惚れさせてみせる、総悟はそう誓って九兵衛に接した。

その結果、調教することはできなかったけど、お互いに惹かれ合ってしまって、結局総悟が
「俺の恋人にしてやってもいいですぜィ。」
と九兵衛に告白し、
「それなら、君の恋人になってあげてもいい。」
と九兵衛が答えて、二人は付き合い始めた。

付き合い始めは、そこそこうまくいってるように思えた。
ドSの総悟に対して、男として育てられた名家の娘の九兵衛は世間知らずだったから、総悟の言うことを素直に聞いた。

「恋人同士は手をつないで歩くもんですぜィ。」
と言われれば、照れながらも手をつないで歩いてくれたし、
「初めてのキスは女からするもんなんですぜィ。」
と言えば、顔を真っ赤にして、羞恥なのか、涙で潤んだ目で総悟の唇にキスをしてくれた。

なんでも素直に聞いてくれる九兵衛に、ドSの総悟が庇護欲と保護欲をかき立てられ、九兵衛を大事にした。

九兵衛の方も一ヶ月も経てば、総悟の言ってることの半分以上は総悟に都合のいいことであることは察していたけれど、どうにも受け入れがたい、首輪付けて散歩したいとかの要求以外は聞き入れることにしていた。

が、三ヶ月も経つと、二人はケンカすることが増えてきた。

ドSの総悟は、九兵衛を束縛したい。

たが、九兵衛は束縛されるのを好まない。
武者修行の旅にでたら三年も帰ってこないほどだ。
普段、名家柳生家の次期当主としての重責を背負い、柳生家始まって以来の天才と称されてる分、何者にも縛られず、何も背負わずにいられる時間を欲している。

そこが二人はどうしても相容れない。

朝一番、おはようメールと共に総悟から送られてくる九兵衛の今日一日の過ごし方への細かい質問に九兵衛はうんざりしていたし、自分の質問に対する九兵衛のメールの返事、『午前は鍛錬、午後は買い物』みたいなあっさりした返事に総悟は憤る。

その日も、毎日の恒例になっているおはようメールと今日の過ごし方質問メールに返ってきた九兵衛からの返事『午前は出稽古、午後は鍛錬』の言葉に総悟は毎日毎日どうしてこう質問の答えになってない返事を送ってくるのかと思い、ついに堪忍袋の緒が切れて、朝一から柳生家に乗り込むことにした。
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