銀魂

□恋人は人気タレント6
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「髪を切ろうと思うんだけど。」

九兵衛の歌番組への出演が終わったから、高杉宅から自宅に戻れることになった日の夜。
愛してますか、先生の撮影が終わり、自宅まで送る途中の車の中で、眠そうな顔した九兵衛がそう言いだしたので、俺は驚いて
「なんでだ?」
と聞いていた。

「次のドラマ、過去のトラウマのせいで笑わない刑事の役だろう?
そんな刑事がロングヘアで仕事するのかなと思って。」
九兵衛がそう答える。

「まぁ、確かに女刑事ってロングヘアのイメージではないけど、ロングヘアの女刑事もいるだろ。
それに愛してますか、先生の撮影と赤バッジ!の撮影、かぶってくるぞ?
絵が繋がらなくなるだろ。」

俺の答えに九兵衛は
「そっか……」
と残念そうに答えた。

「髪切りたかったのか?」
「あの役には、ショートヘアがいいかなと思っただけだ。
次のきみありてこそは、カツラだから髪の長さ関係ないしと思ったけど、撮影がかぶるなら、奏の髪型変えるわけにいかないからな。」
九兵衛はそう言って、あくびをかみ殺す。

「寝たいなら寝てていいんだぞ?」
「車の中にいたはずなのに、目が覚めたらベッドの上で、5時までに目が覚めなければ部屋に起こし来るって書き置きがあった時の驚きが分かるか?
高杉先生に迷惑をかけてしまったと、真っ青になった。」

九兵衛の言葉に、俺は九兵衛を高杉先生様の家に送って行った時、九兵衛が目が覚めなかったから先生様が九兵衛を抱き上げて部屋に連れて帰った日の事を言っているのだろうと思う。
あの先生様は、どんなことも全て、それがお前に関わることなら迷惑だと思わないだろうけどな。

でもそんなこと言ってやる必要はないから、代わりに
「今日は、お前を部屋に連れて行くのは俺だ。
なんなら、目が覚めるまでベッドの中で抱きしめててやるけど?」
と言ったら、九兵衛は
「そっか、今日は自分の家に帰るから大丈夫か。
本当に抱きしめててくれるんだな?
それなら寝る。
お休み。」
そう言って、助手席で目を閉じて、すぐに眠りに入ってしまった。

それを確認してから、一応、髪型のことは愛してますか、先生のプロデューサーと、刑事ドラマのプロデューサー、社長に話しておくかと思う。
本人の希望にはできるだけ添ってやりたい。

信号が赤になったので止り、俺は助手席の九兵衛を見る。
よく寝ている。
本当に疲れてるんだろう。

一昨日は、愛してますか、先生の撮影の合間に、歌番組の生放送で歌っている。
隣り合ったスタジオで撮影していたのが功を奏して、本人にとってはあり得ない忙しさだったろうけど、撮影の隙間時間に歌番組に出演できた。
愛してますか、先生の制服の衣装のままで歌った事で、世界観がリアルだったと好評だったと聞いている。
実際は、着替えてる時間もなかったからこそ、苦肉の策だったわけだったけれど。

愛してますか、先生の撮影は佳境に入ってきているからな。
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