銀魂

□年越しの夜に咲く花
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高天原のカウントダウンイベントは、31日の23時から1日の1時までの二時間限定のイベントだという事だった。
店のキャパを考えたら、40人しか入れないので1の九兵衛さんから5の沖田さんのお客様6人と、オーナーのお客様10人しか参加できない。

参加するお客さんは、先着順で自分の指名ホストのチケットを買う。
とは言え、年越しを一緒にすごし、しかもその後は一緒に初詣まで行けるとあって、わりと高額なチケット、現金のみでしか支払いできないはずなのに瞬く間に売り切れた。

その日の開店が23時なので、ヘルプホストは22時出勤で良かった。
22時に出勤すると、すでにオーナーと九兵衛さんが店にいて、二人は店のレイアウトを変えていた。
それを出勤してきたヘルプホスト達が手伝い、その後、掃除をしてグラスなどの準備をする。

そうしてるうちに、高杉さん達も出勤してきて、23時にオーナーが店のドアを開けると、すでにそこにはチケットを買った客が集合していた。
「お待たせ致しました。
いらっしゃいませ。」
とオーナーと九兵衛さんが挨拶をしながら客を店内に入れ、高杉さんと坂田さんが席に案内する。

そして、あと少しで0時になろうという頃、九兵衛さんとオーナーが俺らが来る前に用意していたお立ち台の上に高杉さんが立った。
ひらっと飛び上がって台に立つ高杉さんは、そんなキザな台への上がり方すら、様になっていた。
店内からかっこいい!などの叫びが上がるが、高杉さんはその声に応えることもなく、九兵衛さんに向かって、手を差し出した。
九兵衛さんがその手を取る。
そして、高杉さんに引き上げられ、九兵衛さんも台の上に立つ。

美青年と美少年のその行動に、店内はものすごい歓声に包まれた。

しかし、九兵衛さんが
「本年も高天原をご愛顧くださり、本当にありがとうございました。
姫たちとの日々のおかげで、僕達も充実した日々を過ごせています。
従業員を代表して、お礼を申し上げます。
ありがとうございました。
来年も引き続き、ご愛顧くださいますよう、心よりお願い申し上げます。」
と頭をさげたら、店内はシンとする。

そしてすぐに、拍手が沸き起こった。
「九兵衛くーん!」
「こちらこそ、楽しかったわ!」
「素敵!!」
などと、お客さんが上げた声に、九兵衛さんがにこやかに手を振って応える。
ほんと、店ではすげーかっけー美少年にしか見えねぇ。

「それでは!
そろそろカウントダウン、はじめましょう!
みなさん、クラッカーは持ってますか?」
九兵衛さんが手にしていたクラッカーを掲げると、店内の人全てが同じようにクラッカーを掲げる。

店内の時計を見ていた高杉さんが、
「10!」
とカウントを始めた。
九兵衛さんが
「9!」
と言うと、次の8は高杉さんが言う。
そうして交互にカウントをし、最後の
「0!!
Happy New Year!!」
は店内全員が声を合わせ、クラッカーを全員が鳴らして、その後拍手が起こった。

「本年もどうぞよろしくお願い致します。」
いつの間にか、お立ち台の前にオーナー、坂田さん、河上さん、沖田さんが並んでいて、高杉さんと九兵衛さんもお立ち台から下りて、その列に並ぶ。
そうして六人は深々と頭を下げた。

「新年は7日より営業致します。
7日は全員、羽織袴での接客になります。
もしよろしければ、是非いらして下さい。」
頭を上げてから、オーナーが言う。
客が拍手をして、そうしてオーナーが
「それでは、初詣に参りましょうか。」
と言うと、拍手が大きくなる。

店の片付けは、初詣から帰った後、全員でやるそうだ。
だから客は5の沖田さんまでの客しかいないけれど、初詣は出勤したホスト全員で行くとのこと。
ヘルプホストにも担当してるホストがお守り買ってくれるそうだし、6以下のホストには、九兵衛さんが買ってくれるそうだ。

店から一番近い神社に向かうのに全員、外にでるのでコートを着た。
ほぼ全員がダークカラーのロングコートやダウンを着ているなか、九兵衛さんは短めの丈のライトグレーのピーコートを着ていた。
本当に、かっこいいよな。
ライトグレーのコートなんて、うちのホストの誰も着ていない。
俺だって黒いダウンを着ている。
だからこそ、目立つ。

九兵衛さんにだけ、スポットライトが当たってるみたいだ。
周囲の人が注目してる高天原のホスト達の中でも、一際輝いているように見える。

しかも、初詣の最中に、晴れ着を着て神社の石段ではしゃいでて、転がり落ちそうになった女を小柄な女性であるはずの九兵衛さんが危なげなく抱き留め、
「元気な女性は素敵ですが、折角の晴れ着です。
汚したらもったいないですよ、気をつけて。」
なんて声をかけていて、周りにいた女たちが九兵衛さんにぽーっとなっていた。

罪な人だよなと思う。
絶対に、この中の女の数人は、後日、九兵衛さん指名で高天原にくるだろう。

昨日、可愛らしいエプロン付けて俺の部屋でグラタン作ってくれた人と、今、女たちに囲まれてる人が同じ人だとは思えない。

客に開運招福のお守りを買った後、
「いつも色々気を使ってくれてありがとう。」
と、自分のヘルプホストたちにも厄除けのお守りを買ってあげている九兵衛さんを、俺はただ見ている事しかできなかった。

毎日会いたい、そう言ったけど、さすがに今日は会いに来て欲しいとか言えねぇしな。
一月一日は晋助達と初詣行くって言ってたし。

俺はそう思いながら、
「ほら、お前にもお守りやるよ。」
と沖田さんから渡された、安産のお守りを握りしめた。
安産のお守りとか、ぜってぇ俺に対する嫌がらせだろ、妊娠なんかしねーよ。
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