銀魂

□俺の前から消えてくれ
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九兵衛は土方の恋人である。

強くて優しい女の子になりたかった九兵衛が、妙と街を歩いている姿を見かけるたびに綺麗になっていく姿を見て、土方は気がついたら九兵衛を好きになってしまった。

本人の中ではそれなりの葛藤があったが、ミツバに対しては自分じゃない普通の人と、普通の家庭を築いて、普通に幸せになって欲しいと思った。
けれど、九兵衛はそもそも、普通の女じゃない。

そんな女だからこそ、自分が相手でも付き合ってるいけるんじゃないか、そう思ったら自分の考えがおかしくなって、土方は自分が強くて優しい女の子になれるの『かもしれない』くらいに考えが変わっていた九兵衛を強引に口説いて、逃げる九兵衛を追いかけまくって、うんと言わせて恋人になった。

ただ、思った通り、九兵衛は普通の女じゃなかった。
口説いてる時は気にしなかったけれど、付き合い初めて、九兵衛は男に触れられると投げ飛ばしてしまうくせに、常に男に囲まれている事に気がついた。

道場の門下生は男ばかりだし、柳生四天王は若への愛がすごい。
土方と付き合いはじめた事を知った時は、柳生四天王は雁首揃えて真選組の屯所に来て、土方に若と別れろと迫った。

それを見ていた近藤が九兵衛に連絡してくれて、駆けつけた九兵衛に怒られ、
「僕は『今はまだ』土方くんと別れる気はない。
お前達、こんなくだらないことをする暇があるなら剣の稽古に励め!」
と言われた四天王は、それ以降、こんなことはしなくなったけれど。

土方としては、『今はまだ』と言う言葉に引っかかってしまった。
後日、本人に聞いたら
「そんなこと言ったか?
すまん、覚えてない、四天王への怒りの方が大きくて。」
と言われ、特に意味はないのだろうと納得したが、それにしても、今までの女にそんな言い方をされた事はなかったので、本当にびっくりした。

そう、土方と付き合ってはいても、九兵衛は何はなくともまず土方が一番!ではなく、土方と会う約束があっても将軍家や妙から呼ばれれば、平気で土方との約束をキャンセルした。

逆にデートの最中に土方が仕事で呼ばれても、行かないでなんて言うこともない。
「大変だと思うが、怪我をしないように気をつけてくれ。」
という言葉と共に、あっさりと仕事へ送り出される。

そんな女は初めてだった。

自分より将軍家を優先するのは、土方の感情は別として、理解はできる。
しかし、自分より女友達を優先するのは理解できない。


今も、屯所の土方の部屋に遊びに来ている九兵衛は、土方を膝枕してくれていたが(土方は膝枕をされながら、部下達から上がってきていた大量の報告書に目を通していた。)
「妙ちゃんからメールが来た。」
と言って、携帯を手にしている。

「なんの用だよ、あの女。」
土方は内心面白くなかったけれど、それを表に出さないようにしながら聞く。

自分と九兵衛の関係を知った時、別れろと言いに来たのは四天王だけではないからだ。

九兵衛と付き合い始めた時に、妙は真選組の屯所に来て言ったのだ。
『私、九ちゃんには幸せになって欲しいんです。
九ちゃんがどれだけ家のことで苦しんだか、私が一番近くで見てきたんです。
だから、誰よりも幸せになって欲しいので、土方さんと付き合って欲しくないんですよね。
あなたで九ちゃんを幸せにできるんですか?
できないと思うんですよね、だって、あなた、真選組の副長でしょう?
たくさんの人から色んな恨み買ってますよね?
そんな人と、九ちゃんが付き合うなんて私、反対ですから!
あなたの恋人が九ちゃんだって知った攘夷志士から九ちゃんが狙われたりしたらどうするんですか!
どうもできないでしょ、だから別れて下さい!』
と。

そんなことは分かってる。
自分は、死んだら地獄に落ちるだろう。
九兵衛と同じ所には行けない。

けど、それも全て分かった上で、土方はこの女と生きていこうと決めて、九兵衛と付き合いはじめた。
それは土方にとっては生半可な覚悟じゃなかった。

なのに、他人から言われると頭にくる。
土方は妙に
『それはあんたにどうこう言われることじゃねぇだろ。
あいつだって、自分の立場だのなんだの全て分かった上でそれでも俺を受け入れたんだから。』
と答え、帰るように促した。

妙は黙って帰って行ったが、それ以降、九兵衛への呼び出しが頻繁になった。
おそらくは、土方と九兵衛の仲を邪魔するためにそうしているんだろうと土方は思っている。
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