銀魂

□君の事を忘れるなんてありえない
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その一報を将軍と将軍家御台所・お愛の方様が聞いたのは寛永寺に二人で参拝をしている時だった。

二人の警護を担当していたのは真選組で、責任者は土方だった。

その土方のもとに近藤から
「柳生勝護様が、幼稚園から誘拐されそうになった!
幼稚園の教諭が気がついてかばってくれたため、勝護様はご無事だったが、その教諭は軽傷ではあったけど病院に運ばれた!」
との連絡が入った。

土方の顔色がさっと青ざめたのを見た山崎は、
「どうかしましたか、副長。」
と声をかけたが土方はそれには答えず
「勝護様は!?
無事か!?」
と近藤に聞く。

「今言ったろ、無事だ。
しかしまさか、幼稚園内まで入って勝護様を誘拐しようとするやつがいると思わなかった。
上様と、御台様にはトシの方から伝えてくれないか?
中奥では幕臣達が今後の対応について、すでに話し合いを始めている。
勝護様は、見廻組の佐々木殿が自ら柳生家まで送り届けるとのことだ。」
と返事が返ってきて、土方はほっとした。


柳生勝護、本人には伝えていないが、将軍家次男に当たる方だ。
柳生家を継ぐために生まれてすぐ、柳生家に引き取られて養育されているが、九兵衛は素性を隠して月に三回ほど勝護に会いに行っている。

その際の警備の担当も土方がしているから、九兵衛がどれだけ勝護を愛しているか、土方は理解している。
むしろ、九兵衛は四人の子供の中で勝護を一番大事にしていると思う。
自分の手元で育てることができないこと、そして自分も幼い頃から厳しい剣の稽古に泣いていたそうだから、同じような境遇の勝護には特に感情移入しているのだと思う。

どのように伝えたら、九兵衛のショックをできるだけ和らげることができるだろうか……?
考えても分らず、土方は頭を抱えた。

結局、歴代将軍の墓所を参ったあとで、本堂に戻った二人に土方はその事を近藤から聞いたままに伝えた。

上様の顔色が悪くなる。
そして九兵衛の方はよほどのショックを受けたのか、それを聞いた時、座ったまま後ろにひっくり返りそうになった。
その体を、上様より早く土方は支える。

「御台様!!」

慌てて土方が声をかけ、室内に控えていた他の隊士たちも慌てて御台所である九兵衛に近寄っていく。

「勝護……」

「御台様!
勝護様はご無事です!
御台様は大丈夫ですか!!」

うっすらと閉じられたまぶた、頭は後ろにのけぞり、細く白い首が土方の眼前にさらされている。
こんな時なのに、思わず欲情しそうになった土方を現実に戻したのは上様の

「愛!!!
大事ないか?!」
という声だった。

しかし、九兵衛は
「勝護……」
ともう一度呟いて、完全に気を失った。
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