銀魂

□あなたへ愛の押印を
2ページ/7ページ

首……執着心 高杉

ついさっきまで自分の下で乱れてた九兵衛が、ベッドの中から腕を伸ばし、脱ぎ捨ててあった襦袢を手に取ったのを見て、ベッドの上で上半身だけ起こし、煙管を吸っていた高杉が声をかける。

「もう帰るのか?」

「ああ。
明日は朝から真選組に稽古付けにいかなきゃならないからな。」

「真選組の野郎どもも、稽古付けに来てくれる柳生の若様の恋人がまさか高杉晋助だとは思ってねェだろうなァ。」

楽しそうに笑ってる高杉に返事をせず、ベッドの中で器用に襦袢を羽織った九兵衛は、ベッドから出て鏡の前に立った。
身支度をしようと自分の姿を鏡に映した九兵衛は嫌そうな顔でベッドの上で自分を見ていた高杉に視線を移す。

「晋助、僕の首のところに内出血があるぞ。
いつもこれはつけるなと言ってるだろう。
どうすんだ、これ、服に隠れないじゃないか!」

「隠れねェところにつけなきゃ意味ねェだろうが。」

「意味があるかないかなんて聞いてない、つけるなと言ってるんだ。
僕は対外的に恋人なんかいないことになってるんだぞ。
それがこんなものつけていたら、恋人ができたのか、なら連れてこい、どんな人か会わせろと周りが騒ぐだろ。
この人が恋人ですって高杉晋助連れて行くわけにいかないだろうが!」

高杉は形のよい眉をつり上げて怒っている九兵衛を手招きする。
「なんだ?」
と言って近づいてきた九兵衛を高杉はもう一度ベッドの中に引っ張り込んだ。

「ちょ、晋助!」

「てめえは俺のもんだ。
他の誰にもてめえを渡す気はねェ。」
組み敷かれて見上げた高杉は、どこかからかうような口調だったけれど、真剣な顔で九兵衛を見ていた。

「お前は本当にずるい男だな。
過激派攘夷浪士のくせに。」
そうぼやいた九兵衛の首筋に、高杉は吸い付いた。



九兵衛はいつも、真選組屯所に稽古をつけに来る時、約束の時間の十分前には到着している。
時計を見た土方はそろそろかと腰を上げた。
週に一回、かつての将軍家剣術指南役柳生家の次期当主に無料で稽古をつけてもらえるのだから、こちらとしても礼は尽くさなければ、と土方は九兵衛を必ず玄関に迎えに出ることにしている。

その時、玄関から総悟の
「九ちゃん、いらっしゃい。
待ってやした。」
と言う声が聞こえ足を早め玄関へ向かう途中で
「九ちゃん、首んとこ、何カ所も赤くなってやすぜィ。」
という、総悟の言葉が聞こえ、土方はびっくりした。

玄関に着くと、そこには道着姿の九兵衛がいて、確かにその細くて白い首には赤いあとがいくつもあるのが見えた。

「おい、それ虫刺されか?」
一瞬、キスマークかと思ったが、そんなものを柳生の若様がつけたまま堂々と歩くわけないかと、土方はそう声をかけていた。

「おはよう、沖田くん、土方くん。
今日はよろしく頼む。
ああ、これは虫刺されだ。
質の悪い虫にやられたんだ。」

その言葉にほっとした土方と総悟だったが、そう言った九兵衛の表情を見て固まった。
質の悪い虫にやられたんだ、そう言った九兵衛の顔が幸せそうにほころんでいた。

END
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ