銀魂

□教え子は若奥様
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「だから弁当はいらないっていってんだろ。
愛妻弁当ってのが俺にはあるんだってば!」

毎日毎日俺に弁当を差し入れようとする女子三人組に俺はそう言って青いチェックのナプキンに包まれた弁当を掲げて見せた。

これは毎日の事だ。
毎日断ってもこいつらは弁当を持ってくる。
俺はそれを断る。
周りの先生たちはそれをまたか、みたいな目で見ている。

こいつら三人が、なんで俺に毎日食べてもらえないとわかっても弁当を持ってくるかは分からないが、俺は正直迷惑している。

結婚指輪だってきちんとしているし、毎回愛妻弁当があるからいらねぇって断っているのに、それでもまだこいつらが弁当作ってくるからだ。

九兵衛がやきもち焼いてるとこは可愛いが、かといって毎日毎日こんなことが続けばもともと短気な俺はイライラもする。
その気がないのに断るのも嫌なものだ。

「一回だけ食べてくれればそれでいいですから。
お願い、先生。」
どこか甘えたような口ぶりも、俺のイライラを高めるには十分だった。

「お前ら、いい加減にしないとそのうち俺の嫁から訴えられてもしらねぇからな!
嫁って言うのは、法律でもその立場を認められてんだぞ。
強いんだぞ。
それになにより、俺が嫁以外の人間が作った食いもんを食べられねぇんだよ。」

俺の言葉に、三人組は
「ほんと、土方は固いよねぇ。」
と言って去っていく。

「呼び捨てにすんな、土方先生だろうが!」
俺は三人の背中に向かってそう叫ぶと、席に着いた。

「土方さんがうらやましいですよ。
愛妻弁当のほかに、生徒からも弁当もらえるなんて。」

同僚の山崎がコンビニのサンドイッチの封を開けながら俺を見る。

「じゃあ明日もし持ってきたら受け取ってお前にやるよ。」
そう言いながら俺はナプキンを解いて弁当箱のふたを開けた。

九兵衛が同じおかずだと二人の関係がバレるといって別々におかずを作ってくれる弁当。
あいつにはいつも感謝してる。

だから、他のやつの作った弁当なんて食えるわけないんだ。
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