銀魂

□恋人は人気タレント
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その日、俺は社長に呼ばれていた。
社長室の机の上には一冊の台本がある。
題名は『君がため』。
社長の松平片栗虎は俺に向かってその台本を見せた。

「トシ、九兵衛にドラマの主演の仕事がきた。
今、飛ぶ取り落とす勢いの高杉晋助の脚本で、九兵衛は高杉先生のご指名だ。
主題歌もつんぽのプロデュースで九兵衛に歌わせるって。」


俺がマネージャーをしてる柳生九兵衛…これは芸名ではなく本名だ…は、この弱小芸能プロダクションの稼ぎ頭の売れっ子タレントだ。

社長自らスカウトしてきたらしく、顔はかわいく小柄なのに剣道を習っていたとかで身体能力は抜群だった。
それを生かして特撮のオーディションを受けさせてみたら合格し、見事ヒロインの座を射止めた。

他の役者が危険なアクションをこなせない中、九兵衛はスタントなしでアクションをこなした。

左目を幼い頃にケガしたらしく眼帯を着けていたが、それがマイナスにならないほどルックスはいいし、演技は最初は下手だったがみるみる上達して、その番組にでてた役者の中では一番の人気を得た。

一年の撮影を終えた後にはうちのような弱小事務所には信じられないような大きな仕事が次々に舞い込んできて、いまや大手プロダクション所属のタレントにも引けをとらない稼ぎをたたき出すタレントに成長にした。

その九兵衛にまた新しい仕事が舞い込んできたという。

「しかし社長、九兵衛は3クール連続でドラマの出演してるんですよ。
そのままオフなしで新しいドラマに主演って大丈夫なんですか?
一年間、でずっぱりじゃないですか。
九兵衛は、身体能力は高いですけど体力はそんなにあるほうじゃないですよ。」

「そこを調整すんのがトシの仕事だろ!
とにかくさ、九兵衛の主演OKすんなら相手役をうちの総悟にしてくれるって言ってんだよ!?
新人の総悟がいきなりドラマでデビューできんだし、九兵衛は主演だし、うちは高杉先生とつながり出来るし一石三鳥!
とにかく九兵衛にこの話のことしとけよ。
これ台本。
生まれ変わりを題材にしたラブストーリだと。」

そう言って渡された台本をみて、俺は顔をしかめたが、社長には逆らえないのでわかりましたと答えた。

「まぁ、同じ事務所だけど総悟は新人で九兵衛は売れっ子だからあんまあの二人、あったことねぇだろ。
総悟のマネージャーの近藤と話して出来るだけ九兵衛と総悟の一緒の時間作るようにしろ。
すんなり撮影に入れるようにな。
九兵衛と総悟以外の役者はオーディションで決まるから実際の顔合わせは一ヶ月以上先だけど、二週間後くらいに九兵衛と総悟は高杉先生とプロデューサーへの挨拶あるから、きちんと日にち決まったらまた連絡するわ。
そんじゃ、よろしく。」

社長にそう言われ、俺は頭を下げて社長室を退出した。

オフィスには俺の先輩に当たる近藤さんがいたが昼寝をしていた。

近藤さんを叩き起こし、今の話をして、台本を見せる。
近藤さんは最初は喜んでいたけど、台本を読み進めるうちに
「これ、相手役総悟で大丈夫か?!」
と心配し始めた。

俺はといえば、重い気分になっていく。
これ、絶対九兵衛納得しねぇよなと思いながらどう言えば九兵衛を説得できるかなと考えていた。
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