銀魂

□それぞれの誕生日
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高杉の場合


三年間の武者修行の間に九兵衛は寝ていても人の気配を感じるとすぐに目が覚めるようになっていた。
それは自宅で寝てるときも同じこと。

九兵衛は自分の部屋に誰かの気配を感じて目が覚めた。
が、目を閉じたまま神経は研ぎ澄ましてあたりを伺う。
相手に殺意はないようだったが、九兵衛の布団に近づいてくる。

九兵衛は起き上がると枕もとの刀を抜いた。
「誰だっ!!」

「俺だ。」
そこにいたのは高杉晋助だった。
九兵衛は刀をおさめる。

「なんだ、晋助か。
どうしたんだ、こんな夜中に人の家に忍び込んできて。
曲者がきたのかと思ったじゃないか。」

「だからって目ぇ覚ますなり、刀掴んで斬りかかろうとするなんて、柳生の姫ってのは随分物騒だな。」
高杉は不敵な笑みを浮かべて九兵衛を見ている。

「すまんな。
三年の武者修行の間に人の気配に敏感になってしまったんだ。
それで、こんな時間になんだ?」

九兵衛はそう言って高杉を見上げる。

「馬鹿か、今日はてめぇの誕生日だろうが。
どうせ、柳生家のパーティとかで今日は忙しいんだろ。
だから夜中に来たほうが人目につかないと思ってな。
それに一番に祝いを言ってやれる。」

高杉の言葉に九兵衛の顔が綻ぶ。

「もしかして覚えててくれたのか?」

「忘れたりはしねぇ。
取っておけ。」

そう言って高杉は九兵衛に向かって何か投げた。
それを受け取って、眺める。
「これは…綺麗な帯留めだな。」

高杉が投げてよこしたのは、帯留めだった。
プレゼントだというのにラッピングもされていなかった。
蝶の形をしていて、四枚の羽は紫色の石で出来ている。

「プレゼントだ。
じゃあな。」

そう言って帰ろうとする高杉の袖を九兵衛は引いた。

「晋助、ありがとう!」

満面の笑みでそういう九兵衛に高杉も口元を緩めた。

「こんな腐った世界だがお前が生まれてきたことはめでててぇことだ。
そう考えると、この世界も悪くない。」

高杉が九兵衛のあごに手をかけた。
九兵衛が目を閉じる。
二人の唇が重なった。


「きゅっ、きゅっ、九兵衛!
その帯留めは何?!」
自分の誕生パーティのために着飾って輿矩の部屋を訪ねた九兵衛をみて、輿矩は目を見開いた。
九兵衛が今日つけている帯留め。
それは始めてみるものだった。

「……ある方から、頂きました。」

「そそそんな高いものくれる知り合いが九兵衛にいたのか?!」

父の慌てぶりに九兵衛は驚きながら父に聞く。
「高いものってどういうことですか?」

「それ、その蝶の羽の部分の石、カラーダイヤだよ!
そんなにでかいカラーダイヤ、一体いくらするか…?!
そんな高いものくれる知り合いいたらパパ上にも教えてくれないとダメじゃないか!!
同じセレブとしてご挨拶に行かなければ!」

輿矩の叫びは無視して九兵衛は帯留めにそっと触れる。
むき出しで投げてよこしてきたくせに、そんなに高いものだったとは…。
やつらしい、そう思うと九兵衛は帯留めも高杉もどちらも愛しくて仕方ないと思った。

END
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