銀魂

□商社・真選組4
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話を聞いていると総悟の嫁は学生時代からキャバクラのバイトをしていたようだが、そんなバイトをしながらの受験勉強は大変だったと思う。

それに総悟だって、出身高校は県内一番の進学校だ。
小生意気だったので、総悟に対して土方はむかついてばかりだったが、進学校でかなりの成績をおさめながら商社でのバイトなんて大変だったはずだ。

二人とも必死で一緒になるための努力をしたのだと思う。
以前、九兵衛の店に行ったときに、九兵衛が高校卒業したら結婚するために高校時代からバイト頑張っていたと総悟の事を言っていた。
総悟だけに苦労させたくなくて自分もキャバクラでバイトを始めたとも言っていた。
二人がいつ出会ったのかは分からないが、すくなくとも高校時代には結婚を決めてお互いにそのために努力をしていたということなのだろう。

土方は自分が高校の時の事を思い出す。
彼女はいたりもしたが結婚なんて考えたこともないし、バイトに精を出すよりは自分のしたいことに夢中だった気がする。

今は恋人はいないがそれなりに生活は充実していると思うから、欲しいとも思わない。
だから縁遠くなる一方だった。
だからやはり総悟も九兵衛もすごいなと思う。
羨ましいというか…。

そんなことを考えていたら、総悟が何かを話している事に気がつく。
よく見ると携帯をつかっていた。
「うん、すぐ近くに。
じゃ、正門で。」
九兵衛に電話をしていたらしい。

電話を切った総悟が土方を振り返る。
「九ちゃんがすぐ行くから正門で待っててって言ってまさァ。」
それだけ言ってまた歩き出す総悟。

大学の建物はすでに見えて来ている。
総悟の歩く速度が早くなる。
それにあわせて土方も早足で歩く。

そして正門に着いた。
カジュアルな格好の学生ばかりで、門の前にいるといってもスーツ姿の二人は浮いていた。
じろじろと遠慮なく自分たちを見ている学生たちに土方は居心地が悪くなるが、総悟は平然としている。

その目はすでに土方を見ておらず、学生たちも見ておらず、ただ九兵衛を探していたからだ。

総悟の探していた九兵衛はすぐにやってきた。
九兵衛は今日は胸元にフリルのあしらわれたブラウスに膝丈のスカートを着ていた。
ワンピースやドレスの時と違って、良家のお嬢様といった感じだった。

「総悟くん!!」
そう大きな声で言って手を振って早足で歩く九兵衛の目にも自分は見えていないようだ、そう土方は思った。

俺の事も見ろよ、そんなことを思ってしまい、首を振る。
一体何を考えているのだろう、彼女は総悟の妻なのに。

そう思った瞬間、自分たちのところに来た九兵衛が
「土方さんもご一緒なんですね、こんにちは。
いつも総悟くんがお世話になっています。
総悟くん、仕事中だったんじゃないの?
土方さんに無理言ってってここに来たとかじゃないよね?」
と言った。

やっぱりこの子いい子だよ、内心で土方はそう思う。

「まぁ、確かに仕事は仕事だけと、今は昼休みでさァ。
せっかく近くにいたんだし、九ちゃんに会いにきたんでさァ。
嬉しいだろィ?」
総悟の言葉に九兵衛は真っ赤になってうつむいてそれでも小さな声で
「嬉しい。」
と言った。

土方の胸がドキッと音を立てる。
あんまりこんな九兵衛は見たくない。
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