銀魂

□私立・万事屋学院高校の新学期2
2ページ/5ページ

万事屋学院高校は、幅広い進路に対応できるように、選択授業の科目が多くある。
そんな中、九兵衛は三年生の必修の現代国語と、選択と一年一組の古文を担当していた。

選択の古文を必要とする人はそう多くはないはずだったが、単位の数合わせなのか、結構な人数の生徒が古文の授業を選択していた。
その中には九兵衛のクラスの土方、沖田、近藤、北大路、高杉、東城なんかもいて、九兵衛は初めて授業をしたときはなんだこの取り合わせはなんて内心で思ったものだった。

偏見かもしれないが、特に高杉など古文に興味が有りそうには思えない。
なんかの間違えで紛れ込んできたのではないかと初日には名簿を確認してしまったものだった。


「九ちゃん!
どうして百人一首の恋の歌は悲しいものが多いんですかィ?」
土方の後に沖田が質問をしてくる。
「沖田はどうしてだと思う?」
「Mが多かったんだと思いまさァ。」
「M?
なんだ、Mっていうのは?」
沖田の言ってる意味が分からず、九兵衛は首をかしげた。

「柳生先生、沖田のいうことは聞き流していいと思います。」

「総悟のいうことはまともにきいちゃいけませんよ、先生!」

「そうです、先生にはいつまでも今のままの先生でいて欲しいので、総悟のいう言葉の意味を理解しようとしないでください。」

北大路、近藤、土方にそう強く言われ、九兵衛は頷いた。

「なんでィ、そんな言い方しなくてもいいじゃねェですか。
ドSは打たれ弱いんでさァ。」

「沖田はだまってろよ、九兵衛に変なこと教えんな。」
高杉が心底呆れたようにいう。

「まぁ、それは置いといて、昔の日本は身分が違えば恋をすることすら許されなかったし、政略結婚は多いし、一夫多妻制だったからな。
身分がちがうだけで引き裂かれた人たちもいただろう。
好きでもない人と結婚して恋を知らないままの人もいただろうし、好きな人と引き裂かれて、別の人と結婚しなければいけなかった人もいただろうし、沢山の妻がいる夫を待つ妻の想いと言うのは複雑だっただろう。
だから忍ぶ恋が多かったのではないかと思う。
仮に好きな人と結婚できても、好きな人が自分の元に来てくれるのをただじっと待つことしかできない。
相手が心変わりして他の女性の元に通い始めても耐えるしかない、その苦しみが切ない恋の歌につながったのではないかと僕は思っている。」

「先生がそうなったらどうしますか?」
土方がいやにまじめな顔で聞いてきた。

「そんな男を選ばないようにするだろうけど、相手にその気はなくても想いを寄せる女性は現れるかもしれないな。
その時は相手を好きだから耐えるだろうな。」

そういいながら九兵衛の頭に浮かんだのは銀時とあやめだった。
銀時は浮気なんか絶対にしない。
あやめは顔も可愛いし、スタイルはいいし、一途に銀時を想っている。
それでも銀時はそんなあやめを撥ね付けている。
浮気などしないだろう。
それは分かっている。
けど、やっぱり辛い、銀時が他の女性に迫られているのを見るのは。

「俺ならそんな思いはさせないぜ。
だから俺にしとけばいいんじゃね?」
高杉の言葉に九兵衛は苦笑いをする。
「高杉が大人になってもその気持ちが変わらなかったらその時に考えてみる。」

「っつか高杉は黙れ!」

「そうだ、高杉は黙ってろ〜。」

他の生徒たちが騒ぎ出したので、九兵衛が
「静かに!
課題の続きをやりなさい!」
と声を上げた時、チャイムが鳴った。

「ああ、しまった!
余計な話をしすぎて授業時間がなくなってしまった!」
さけぶ九兵衛に生徒たちは笑う。

「あー、それじゃ仕方ないな…。
できたとこまででいいから、土方、昼休みにノート集めて国語準備室にもってきて?」

「先生!
あんな瞳孔開き男に頼まなくても私が持って行きますよ!」
東城が立ち上がったが、
「おまえはうっとおしいからいい。
土方頼んだぞ。
それじゃ、今日の授業はここまで。」
あっさりとそう言って教室を出て行く。

そんな九兵衛の後姿をじっと土方が見ていたことに気がついたものはいなかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ