銀魂

□私立・万事屋学院高校の新学期2
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「忘らるる身をば思はずちかひてし 人の命の惜しくもあるかな。
先生ならなんて訳しますか?」
古文の選択授業の時間。

百人一首の口語訳をするようにという九兵衛の出した課題に土方が手を挙げてそう聞いてきた。

「本来なら、一生愛すると神に誓ったのに私を忘れてしまうあなた、でも私の事はどうでもいい、約束を破ったあなたに神様の罰が当たらないか心配ですと訳すと思うんですけど、一生忘れないと誓ったのに私を忘れるあなたに神様の罰が当たればいいのにとも取れるなと思うんです。
振った男に優しい女なんているわけないし。
先生はこの句をどう思いますか?」

「土方は女性でなにか嫌な思いをしたことがあるのか?」
思わず九兵衛はそう聞いていた。
教室に笑いが起こる。

「いや、あくまで一般論として…」
焦ってそういう土方に微笑んでから九兵衛は言った。

「でも、土方は感受性が豊かだな。
確かに、自分を忘れていく男の事を心配するよりは土方が訳した後者、罰があたればいいのにと思う気持ちのほうが普通は大きいと思うだろう。
でも僕は、やはり罰が当たってしまえばいいのによりは、たとえあなたが神に誓って愛しぬくといった私を忘れて他の人を愛しても、その誓いを破ったあなたに神の罰が当たらないか心配ですと訳すかな。
人の想いはそんなに簡単なものじゃない。
けど、自分を振ったから罰が当たればいいのにではなく、一度でも好きになった人ならその幸せを願うものなのではないだろうか?
というより、そういうものだと願いたいという僕の願望でもあるかな。
だから僕ならあなたを心配していますと訳す。
これが僕の考えだが参考になったか、土方?」

九兵衛の話をその場にいた生徒全員はじっと聞いていた。
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