銀魂

□てめぇじゃなきゃダメなんだよ
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食堂で隊士たちに柳生家からの差し入れを振舞ったあと、九兵衛は東城はじめ付き人を帰し、屯所の俺の自室にいた。

付き合うようになってから九兵衛は屯所の俺の自室に来ることが増えた。
そして泊まって行くこともある。
だから九兵衛の部屋着が何枚か俺の部屋には置いてある。

屯所に来たときに着てた晴れ着を脱いで、九兵衛はそれに着替えていた。

くつろいだ様子で俺と向き合って、俺の機嫌の悪さには気がつかずに、大笑いをしていた。

「本当に傑作だったんだよ、あの時の銀時の顔はさ。」

腹を抱えて笑っている九兵衛は、めったにそんな大笑いをしないだけに、そうしてる年相応の可愛らしさがあるが、万事屋を銀時と呼ぶことがむかつく。

しかも万事屋をはめるためとはいえ、同棲してたってなんだよ、一体!


俺が今、九兵衛から聞いているのは年末に万事屋とかと一緒にした忘年会の話だった。

俺が年末の警戒やなんかで忙しくて九兵衛と会えなかった時に九兵衛から
「妙ちゃんたちと忘年会に行く」
というメールはもらっていた。

俺は
「お前は未成年だから酒は飲むなよ。」
と返事を返した。

その忘年会で万事屋が飲みすぎてその場にいた全員に絡み、店を破壊したらしい。

それで、連帯責任でその場にいた全員が割り勘で店に弁償させられたらしい。

コイツはセレブなのでそんなの痛くもかゆくもないだろうが、他のやつらにとってはそうは行かなかったんだろう。

それは分かるが、そんな万事屋をとっちめるために、こいつらは手を組んで、万事屋と過ちを犯した風に装ったそうだ。

万事屋は全員に対して責任を取ることにして一同を同じ長屋に住まわせ、同棲をしていたらしい。

そこから種明かしをするまでの一部始終をこっそりとビデオにとり、それを全員で見たそうだ。

相当おもしろかったらしい。

九兵衛はいまだに笑っている。

いくら全員で示し合わせたとはいえ、俺が仕事で忙しい間にコイツは万事屋と長屋で同棲していたのかと思うと腹がたって腹がたって仕方ねぇ。

コイツがそれに気がついていないのがまた腹が立つ。

第一、俺たちは久しぶりに会ったっていうのに他の男の話をするとは何なんだ?

俺の機嫌が悪いのにやっと気がついたのか、九兵衛が俺の顔を覗き込む。

「どうしたんだ、土方くん。
面白くなかったか?
それなら今度ビデオを持ってくるよ。
あれを見たら絶対に君も笑うよ。」
とんちんかんな九兵衛の答えに俺はマジで呆れてしまって、ため息をついた。

「土方くん、なんでため息なんか…」

「お前さ、俺が仕事の都合でお前以外の女と同棲することになったらどうする?」

鈍感なこの女にも分かりやすいようにたとえを出して説明してやることにする。

「仕事なら仕方ないだろう。」
しかし、あっさりとそう言われた。

「いいのかよ?!」

「仕事だろう?
仕方ないじゃないか。
僕だって人の事を言えない。
門下生は男ばかりだからな。」

そう言われて俺はなんていえばコイツが分かってくれるんだろうと頭を抱えたくなった。

確かに門下生は男しかいねぇし、コイツを溺愛してる四天王は本気でコイツを男として愛してるんじゃねぇかと思うときも多々ある。

けど、万事屋と門下生はちげぇだろうが。

俺の事は今だに土方くんなのに万事屋の事は銀時と呼ぶし、男にさわられると投げ飛ばすという癖も、万事屋のおかげで俺と付き合い始める頃にはすでに直っていた。

なんだかコイツにとって万事屋は俺より特別だといわれてるようでむかつくんだよ。
ガキみてぇな事言ってるっていうのは分かっちゃいるが。

黙り込んだ俺の顔を九兵衛が覗き込む。

「どうした、土方くん?
眠いのか?
だったら布団をひこうか?」

そういうと九兵衛は布団をひきはじめる。
何度もこの部屋には泊まっているので慣れたもんで、勝手に押入れを空けて布団をだす。

この部屋は、コイツが泊まるようになってから布団を二組置くようになった。

とは言っても結局使う布団は一組だけなんだが、コイツは必ず二組の布団をひく。

「疲れているのなら早く寝たほうがいい。」

そう言って、俺を見上げる九兵衛を俺は抱きしめた。

コイツには遠まわしに言ってもだめなんだ。
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