銀魂

□甘い毒
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気配を感じた瞬間、僕は刀を抜いていた。
襲い掛かってきた刃を自分の刀で払う。

「さっすが九ちゃん!
そのカンのよさといい、反応のよさといい、惚れ惚れしまさァ。」

僕を襲った相手はやったことの凶悪さとは程遠い無邪気な笑みを浮かべて刀をおさめた。

「沖田くん!!
なんなんだ、君は!!
人の顔を見るたび見るたび、斬りかってきて!
いい加減にしないと土方くんに言うぞ!」

僕も刀をおさめると沖田くんを睨みつけた。

沖田くんはへらへらと笑っている。

「へぇ、今まで俺が九ちゃんに切りかかったのは25回。
そのこと一回も土方に話してねぇんですかィ?」

沖田くんは目を細めて僕を見た。

「話さない。
そんなこと話したら、土方くんは怒る。
僕は彼を余り怒らせたくない。
二人で会う時は楽しい時間を共有したいんだ。
彼とはそんなに会えないからな、君のせいで。」

僕は笑っている沖田くんにそう告げる。
僕と土方くんはいわゆる恋人同士という関係だ。
僕は気が付いたら土方くんを好きになっていた。
そして土方くんも僕を好きになっていたらしい。
土方くんから好きだといわれたときはびっくりしたけど、すごく嬉しかった。

そうして恋人同士になって。
でも僕と土方くんは二人で過ごす時間なんかなかなかない。

土方くんは真選組の副長で、仕事が忙しい。
普通の仕事でさえ忙しいというのに、最近は彼…沖田くんが以前よりさらに暴れるようになった。
攘夷浪士を捕まえるために店ごと破壊するとか、そんなことばかりしているからその後始末もあって、土方くんの仕事は増える一方だ。
だから最近は土方くんと外であった記憶がない。

僕が真選組の屯所に土方くんに会いに行かないと二人でなんて会えなかった。

なのにその元凶は町で僕を見かける度に刀を抜いて襲い掛かってくる。

それでもそのことを土方くんに言わないのは、土方くんに心配をかけたくないのと、土方くんが案外嫉妬深いからだ。

会えない時間が愛を育てるなんていう言葉があるみたいだけど、土方くんは会えない時間に僕が何をしてるか心配で仕方ないらしい。

それなのに沖田くんの事を話したら土方くんは本気で怒りそうだ。

だから黙っていたのに彼は全然悪びれず、僕を見かけたら相変わらず斬りかかってくる。

僕は彼が何をしたいのかまったく分からない。

最初の一太刀は本気で僕を殺る気で斬りかかって来ている。

なのにそれを防ぐとあっさりと刀をおさめる。
沖田くんは一体何のために毎回毎回僕に斬りかかってくるんだろう?
何がしたいんだろう。
僕はため息を吐く。
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