銀魂

□ホストアソビ
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夜のかぶき町を巡回していた土方は、にぎやかな女性たちの歓声を聞いて足を止めた。

声のした方を見ると、高天原とかかれた看板がある。
その前で大勢の女性が騒いでいたのである。

「ああ、本城狂死郎の店ですね。
かぶき町のナンバー1ホストの。」

土方の隣にいた山崎が女たちの中心にいる男…本城狂死郎をみている。

「ナンバー1ホストが店の前で何してんだ?」

「さぁ?
お客様の見送りかなんじゃないですか?」

山崎が首を傾げた時、アフロヘアの大きな男が集まってる女性たちに言った。

「狂死郎さんは今日は大事なお客様を出迎えに来てるのです。
もうすぐ、お客様が付くのでどいてもらえませんか?」

女性たちはアフロの男に文句を言っていたが
「すみませんね、お嬢様方。」
と狂死郎が笑顔を浮かべると、女性たちもたちまち笑顔になって
「またお店に遊びに行くわ。」
と言いながら散っていった。

「さすがですねぇ、たったの一言で女性を意のままに操るんですよ?
あーあ、羨ましいな。」

山崎のボヤキを聞かない振りして土方は黙って歩き出す。
くだらねぇと内心思いながら。

土方にはホストという男たちの気持ちが分からない。
心にも思ってない世辞を平気で言うなんて土方はできない。

そしてその世辞を間に受けて金を使う女たちの気持ちも理解できない。

所詮は自分には理解できず、受け入れることができない世界なのだ。


そんな土方と山崎の横を高級車が通り過ぎていって、高天原の前で止まった。

狂死郎が姿勢を正して、止まった車のドアを開ける。

「副長、きましたよ。
あの本城狂死郎が自らで迎える女性ってどんな人なんでしょうね?」
山崎は興味津々といったところだが、土方はまったく興味がなかった。
だから車から降りてきた女には目もくれなかったが、山崎の叫びに足を止めてしまった。

「ああっ!
あれっ!!
柳生の若様じゃないですかっっ!!」

慌てて山崎の指差すを方を見ると、ゴスロリ着物を着た、背の低い女が狂死郎にエスコートされて車から降りたところだった。

柳生の若様こと、柳生九兵衛は妙を思うもの同士として、近藤と気が合うらしい。

そしてその近藤の頼み、君たちには迷惑をかけたからという九兵衛の謝罪の気持ちから、九兵衛は週に一度だけ、無償で真選組の隊士たちに稽古をつけてくれている。

そんなわけで隊士たちも九兵衛が女だということは知っているが、その強さに憧れ『柳生の若様』と慕っているのだ。

そして副長とはいえ、実質的に真選組を仕切っている土方は、九兵衛と関わることが自然と他の隊士よりも多くなっていった。

稽古のあと、何回か二人で一緒に食事をしたこともある。

その剣の腕は土方も認めざるを得ないものだ。

なのに今の九兵衛は着ているものはゴスロリ着物だし、髪も毛先を遊ばせたアップスタイルにしていた。
どこからどう見ても可愛い女の子だ。

あの恐ろしく強い柳生の若様には見えない。
けど、眼帯をつけた小柄な女などそうそういるわけない。
あれは柳生九兵衛でしかない。

唖然としている土方と山崎の前で狂死郎は、

「九兵衛さん、ようこそいらして下さいました。
お待ちしていました。
普段の九兵衛さんも凛々しくてお美しいですが、そんな格好の九兵衛さんもとても可愛らしくて素敵ですね。」

などという。

「僕は嫌だといったんだが、東城がしつこくて仕方なく着たんだ。」

九兵衛の方はにこりともしないが、狂死郎は気
にした様子もなく、

「その東城って言う人は九兵衛さんのことをよくご存知なのでしょう。
九兵衛さんにとても似合っていますよ。」

と言いながら九兵衛の手を引いて店の中に入っていく。

「柳生の若様って男にさわられると投げ飛ばす癖があるんじゃなかったでしたっけ?
なんで本城狂死郎にはさわられても平気なんでしょうかね?」

疑問を素直に口にしただけの山崎に
「うるせぇ!!
俺がそんなこと知るわけねぇだろうが!!
黙れ!!」
と怒鳴って土方はイライラとしながら歩き出す。

なんで自分がイライラしているのかは分からないが、九兵衛のあんな姿をみた土方は確かにむかついていたのだ。
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