銀魂
□私立・万事屋学院高校 恋の始まりと終わり
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九兵衛の母親は、九兵衛を生んですぐに亡くなった。
女中頭のおばばによるとそのことで、財閥の内外からのっとりを考えるものがでて、祖父も父も財閥と九兵衛をなんとしても守らなければならなくなったそうだ。
その結果、九兵衛は女ではなく男として育てられることになったのだ。
いくら柳生家が名家とはいえ、弱みを見せればすぐに食われる。
だから弱みを見せてはならなかった。
でも、九兵衛は高校からは女に戻るはずだった。
九兵衛は祖父や父が思っていた以上に美しく成長してしまった。
もはや男と押し通すのが困難になっていたのだ。
それなのに、九兵衛が高校に進学するちょっと前に、身内に財閥のっとりを企てているものがいることが分かった。
ここで九兵衛が女と分かってしまったら何が起こるかわからない。
そのせいで、九兵衛は女でありながら男子校に通うことになった。
男子校に通っていればいくら見た目が女顔とはいえ女と疑うものは出ないのではないか、祖父と父の言葉に九兵衛も納得した。
不安はいくらでもあったが、それでも祖父の知り合いが理事をしている男子校になんとか入学することができた。
九兵衛が女だと知ってるものは、学校では理事長と担任の松平片栗虎だけだ。
だから九兵衛は三年間ずっと、松平のクラスであることが決まっていた。
二年間、なんとか女であることを隠し通しながら学園生活を送り、あと一年、こらえればいいだけだった。
その、高校生活最後の年に副担任になったのが坂田銀時だった。
死んだ魚のような目で、国語教師なのに白衣をきて、個性的な生徒や教師が多いこの万事屋学院高校の中でも特に個性的な男だった。
ボーっとしているようにみえて実は鋭い。
だらしない上に、やる気もなさそうだが、実は決めるところはきっちりと決めて生徒から慕われている。
教務主任と学年主任、風紀委員と野球部の顧問を務める松平でさえ、銀時には一目置いてるようだった。
九兵衛は銀時が苦手だった。
死んだ魚みたいな目をしているくせに、なぜか銀時は自分を女だとわかっているのではないか、そんな気がして仕方なかったのだ。
だから九兵衛は銀時が苦手だった。
クラス行事の時も、銀時はあまり九兵衛に力仕事や汚れる仕事を割り振らない。
クラスメイトが九兵衛だけずるいというと銀時は
「だって九兵衛くん、むさくないんだもん。
むさい男に情けはかけねぇけど、むさくない男に情けをかけるのは仕方ねぇーでしょ。」
とかやる気なさそうにいい、それにクラスメートたちもなんとなく納得してしまう、そんな状態だった。
そして、銀時はなぜかよく九兵衛を構ってきた。
今日もロングホームルームが終わったところに顔をだし、九兵衛に
「きゅーべーくーん。
全員の現国のプリント集めて国語準備室にもってきてね。」
といい、九兵衛は仕方なく言われたとおりにプリントを集めて国語準備室に向かっていた。