銀魂

□この世で唯一
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「あんた、あんなやつのどこが好きなんでィ?」

たまたま町であった真選組の沖田総悟に腕を掴まれてそう聞かれ、九兵衛は総悟が誰のことを言ってるのかわからずに困っていた。

「何をいってるんだ、沖田くん。
言ってることの意味がわからないんだが…?」

本気で首をかしげる九兵衛に総悟は笑顔を返す。
「わかんねぇなら、わかんねぇままでいてほしいもんでさァ。」
にやりと笑った総悟に、
「君の言ってることはわからない。
君の考えてることもわからない。」
と九兵衛は言い返した。

「本当にわかんねぇんでさァ?」
掴まれた腕を強く引かれて、総悟と至近距離で顔を合わせた九兵衛は、総悟の黙っていれば整っている顔を見ながらこんな性格じゃなければもてたんじゃないかと心の中でだけつぶやく。

そしてふと気が付く。
「そういえば、僕は君になら触れられても投げ飛ばさないな。
僕は男に触れられると投げ飛ばしてしまうというのに。
すごいな、僕に触れて投げ飛ばされないのなんて君と銀時くらいだぞ。」

「なんでェ、それはけなされてるようにしか聞こえねぇでさァ。
俺は男じゃねぇってことですかィ?」
不機嫌そうに細められた総悟の目に九兵衛は気が付かない。

「けなしてなどいない、僕は純粋にすごいなと思っている。」
「そうですかィ、じゃあ万事屋の旦那を葬ればいいんでさァ。
そうしたら俺がこの世で唯一、九ちゃんに触れる男になりやすねェ。」

本気でそんな事を思っているあたり、相当惚れているということなのに、目の前の九兵衛は気が付かない。
どこまで鈍感なんだか。

でも、これでこそ落としがいがあるというもの。
ドSな王子は楽しげに笑った。

END

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